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『まほうのパティシエ ピュア☆ドルチェ』〜せいなるよるの おとどけもの〜
【ファンタジー 官能小説】

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最後のひと皿-1

……ピンポーン♪

わびしい独りのアパートの、ベルが鳴った。

きっと宅配便か、インチキセールスのたぐいだ。

彼女のわけはない。
あの娘は今ごろ、別の男と会ってるはずだからだ。

ピンポーン、ピンポーン。

なんだよしつこいな。

ドンドンドンッ
『すいませぇ〜〜ん……春日野さぁ〜ん』

???
チャイムどころかドアまで叩き鳴らす訪問者の声の主はしかし、女のようだった。
しかも、なんか若い気がする。

散らかった部屋の卓上カレンダーの日付をみる限り、今日、しかも夕方に近いこの時間に、彼女が僕をたずねてくるはずもない。


確かに今夜、このアパートに女の子が来てくれる約束は、あった。
でも、今はない。

サークルの後輩から始まってお付きあいするようになった彼女を、おんなじゼミの先輩に奪われたのが、ほんの2日前だったからだ。

それにしてもいったい誰だよまったく。

僕はイライラしながらカギを外して、ドアを開けた。

『お、遅くなって申し訳ありません!!』
ドアの外でいきなり、ふかぶかと頭を下げたのは、純白のサンタさんの格好をした小柄な女の子、だった。



「……だ、誰!?」
頭をようやく上げた、白いサンタ帽をかぶった彼女の大きな瞳が、僕を見上げた。

なんだよ、結構かわいいな。

思いがけず訪問してきた美少女をよく見ると帽子にも、両肩やコスチュームのあちこちにも、うっすら雪が積もってる。
ふてくされて眠ってるうちに、いつの間にか外は雪模様らしい。

それにしても、誰だろ。

まさかだけど、同じアパートの誰かが呼んだ、デリバリーの風俗とかかよ?
そういえばサンタ風のコスプレだし。

『あっ、あのあのあの、あたし』
寒さのせいかほっぺたを真っ赤にしながら
『ケーキショップ、"ピュア☆パティ"のものなんですけどッ』

ケーキショップ、って。
ああそうか。
忘れてた。

『ご注文のケーキをあたし、途中で落としてしまって・・・ぐちゃぐちゃに』

そうそう。

彼女と今夜いっしょに食べるつもりで、クチコミで星が平均4以上付いてた、ゼミの女の子たちにも有名なお店のケーキを予約して・・・

・・・って、オイ。

ぐ、ぐちゃぐちゃ!?

『本当に、ごめんなさいッ!!』

なんだかやけに、一生懸命な子だな。
まあ今さらケーキだけあったって、いっしょに食う相手もいないし、別にいいんだけどな。

『別にいいよ……それにどうせまだオレ、カネ払ってなかったし』

フリースの上下をだらしなく着こんだお尻を掻きながら、僕は答えた。

『でもでも、せっかくのクリスマスイヴに、予約してたケーキがないなんて、それじゃあんまりですよね?』

なんて言いながらこの子、狭い玄関口にグイグイ迫って来る。

『だから、その・・・お詫びと言ってはナンですが……』

「!?」

『どうぞ、召し上がってくださいッ!!』
と、いきなり。

僕のアパートの玄関先に現れた美少女サンタは、恥ずかしそうに目を、ギュッとつぶって。

フワフワしたスカートのすそを、見ず知らずの僕の前で大胆に、めくり上げたのだった。

『……極上スイーツ、召っし上っがれッ♪』




頬を染めてほほえんだ彼女のスカートの下。

そこはパンツの代わりに、純白のクリームがひとかたまり、ちょうどアンダーヘアーをおおいかくすように塗り付けられていた。

つやつやしたイチゴがふたつぶと、小さなキャンドル数本。
楕円形のチョコプレートに、"merryX'mas"の文字。
そして、首だけで笑ってるミニチュアサンタが、ところ狭しと盛り付けられていた。

僕はそこからまったく目が離せないまま、彼女の肩を抱き寄せると、狭い玄関の中へその冷えきった身体を招き入れ、ドアを閉めた。

もはや僕に、別の選択肢は選びようが無かった。


■■■■■■■■■■


その、聖なる日曜の夜を境に。

この街の周辺で、若い独り暮らしの男性が次々と、ミイラのように干からびた変死体で見つかると言うなんとも物騒な事件が連続して発生し、年末年始のニュースを賑わすことになってゆくのだったが、それはまた別のお話だ。

そのときの僕には、年明けからイヤでも学内で顔を会わせることになる彼女と、そのイマ彼である先輩のことよりもまず、突然現れたこの美少女サンタの方が大問題だったからだ。

ほかのことなんてもう、どうでもよかった。

少なくとも今夜、事件の最初の犠牲者として報道される僕にとっては。


では、皆さんもどうか、よい夜を!!

……merry X'mas,
& HAPPY new year.


〜Fin〜


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