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「……取り乱したりして悪かったわ」
彼女は感情を吐き出したせいか、次に顔を上げた瞬間は、冷静になっているように見えた。
それでも目の周りは真っ赤になったままだけど。
「と、いうわけだから夢威叶はもうこの家に帰ってくることはないの。せっかくサンタさんがプレゼントを届けて来てくれたのに申し訳ないけれど、お引き取り下さい」
「……あなたはこれからどうするんですか?」
「どうって、あなたのせいで寝そびれちゃったから、お酒でも飲んで、無理矢理にでも寝るわ」
見れば冷蔵庫の横には空になったビール瓶がたくさん置いてある。
子供を奪われてからは、酒でも飲まないとやってられなかったのだろうか。
今日はクリスマス。
みんなが幸せになれるよう、俺達は身を粉にして働いている。
「…………」
俯いた莉奈をしばらく眺めていた俺は、一つ頷くと、ワザと明るい声で、
「莉奈さん! 風呂入りましょ!!」
と華奢な肩をポンと叩いた。
「え?」
ポカンと口を開けてこちらを見る彼女に、自分の言葉が足らなかった事に気付いて、慌てて首を横に振る。
「いや、一緒にってことじゃなくて、お風呂入ってきてって言う意味っス! ほら、お風呂ってリラックスするでしょ。温かい湯船に浸かって、ゆっくり身体を休める。今のアンタにはそれが必要なんですよ。そうでもしないとアンタ、このままじゃ壊れちまうよ」
そうだ、この女にはまずはこの荒みきった環境から脱出する必要がある。
今日はクリスマス。
こんな日に悲しい涙を流す人の姿は見たくない。
「俺、アンタがゆっくり風呂に入っている間に掃除しておくから! 急いでバスタブにお湯張ってくるから、アンタは着替えの準備をしといてくれ!!」
「え、え、ちょっと待って……」
わけのわからない顔をしている莉奈をよそに、俺は入浴の準備を済ませる為、浴室へと急いだ。