〈略奪の雨音〉-3
「な、何なの貴方達?ここは私達の部屋よ?早く出て行きなさいよ!」
男性恐怖症の真夏を庇うべく、奈々未は意を決して凄んでみせた。
一階には中原も女将さんも居る……まだ奈々未には気持ち的な余裕があった。
「酔っ払ってるの?そんな言い訳、私達には通用しないから」
奈々未は部屋に設置されている内線を取ると、震える手でフロントに繋いだ。
ずらりと並んだ男達の殆どが、自分に向けて視線を送っているのに気づいたからだ。
つまり、自分が狙われていると察して怖くなったのだ。
{はい、フロント中原でございます}
奈々未は中原の声を聞いて少しだけ安堵した。
あとはこの男性客の狼藉を伝えればいい……しかし、やはり怖いものは怖かったし、かなりの早口で捲し立てるように助けを求めた。
{それは困りました。今から向かいますからご辛抱を……}
フロントからこの部屋までなら10秒と掛かるまい。
奈々未はじわりじわりと近づいてくる男達をキッと睨み、真夏を守るように立ち塞がった。
『お〜!自分の彼女を守るなんて格好良いねえ、奈々未ちゃん』
『そういう凛々し〜い女のオマンコを虐めたくなるんだよなあ?』
「ッ…!!??」
なぜ名前を…?
なぜ真夏との関係を……?
不可解な驚きに後退りしそうになるも、直ぐ後ろには真夏が居るし、真夏の後ろはもう壁なのだ。
『後ろの顔がデカいブスに「特別な人」って言われてその気になったのか?二人でオマンコ擦り合いたいって本気で思ってるぅ?』
『奈々未ちゃんは本物のレズじゃねえんだろ?チンポ付いてる俺達と気持ち良いコトしようぜ?』
『なまっちょろいレズセックスなんかじゃ満足出来ない身体にしてやるよ?頭がブッ壊れるくらいイキまくらせてやるからさあ?』
「で、出ていきなさいって言ってるでしょッ!?」
部屋の隅で吠えるだけの奈々未を横目にしながら、男達は押入れを開けて薄い布団を引き出すと、部屋に備え付けてある和卓の上に放るようにして敷いた。
『奈々未ぃ、こっち来てこの上に寝転がれ』
「ッ!?」
奈々未の後ろで縮こまっている真夏を無視するように、男は奈々未を指差して手招きし、この和卓の上に寝転がれと言い放つ。
その言葉がどんな意味を持つのかを瞬時に察した二人はますます表情を険しくさせ、より奈々未は真夏を庇い、そして真夏は奈々未に縋りつく。