市営グラウンド-4
記憶の中の１０年前の母は今、目の前にいる母より少しだけ若い。
僕と関係を持つことで後ろめたさが少しだけ薄れただろうか。
こうして母が僕と関係を持ち続ける事は贖罪なんだろうか。
それも一度も聞いた事はない。
「昼はもうちょっと後でいいだろ」
「……まあ、いいけれど」
そう言った母は改めて顔を近づいてきた。
「こんなおばさんとばかりして楽しいの？」
「……母さんとしたい」
突然そう言うと、母は虚を突かれたように黙ってしまった。
こういう時、いつも母とは気まずくなる。
親子だからか、乗り気じゃないからか。
「もう一回だけよ。あの子、今日バイト帰り早いって言ってたから」
あの子とは妹の事だ。
僕は母の新しい夫にも、そして妹にも一度も会った事がない。
そう言って母は観念したのか少し間をおいてから、片足を持ち上げて僕の腰の上に乗りかかってきた。
目の前に垂れかけた乳房が小さく揺れるのに、手を伸ばした。
大きくはないけれど、張りもないけれど掌に収まると皮膚に吸い付くような感覚がくる。
黄土色の乳首は小指の先くらいの大きさで、それに指を当ててつまむと弾力を感じる。
その乳首に唇を寄せて吸ったり口に含んだり舌先で愛撫したりすると小さく息を吐く。
性的な興奮というより、母が捨てた子への母性をもう一度拾わせてやるように優しく僕の頭を撫でてくる。
ゆっくりとした時間が流れる。
僕の腰の上に座っていた母の両足を持ち上げて広げる。
そうすると、母は腕を伸ばして傍らのテーブルに置き、支えるようにバランスを保つ。
さっき一度した名残が母の膣内から白くこぼれているが、その向こう側の母の大陰唇は濡れており、表面が浅黒く光っているように見える。
濃い陰毛は面積が広がっているが、密度が薄くてよく見える。
指を伸ばして直接触れるとくちゅくちゅと濡れた音がする。
こういう時も母は感じている顔も恥ずかしそうな顔もしない。
ただ壁や天井を見ているかしている。
母の体を持ち換えて足を両脇に抱えるような体勢になる。
そして先端を宛がうと、母も無言のまま自ら尻を上げて態勢を合わせてくれる。
その時になって初めて母の呼吸は荒く乱れてくる。
無関心に見えてもその時ばかりは普段と違って、ひどく興奮しているようだ。
そんな母を見ると、いつも僕もひどく興奮を覚える。
二度の出産を経た母の膣口は緩い。
押し込むとほとんど何の抵抗も無く、吸い込まれるような感じ。
膣道も広く、締め付けると言うよりは包まれている感じに近い。
母の腰に腕を巻き付けて支えると、ゆっくり腰を使い始めた。
ゆっくりと揺れる母の上半身と髪が揺れ始めると、母は陶酔したように目を閉じて小さく喘ぎ声が出始める。
大きく乱れる事は無いけれど、僕の動きに合わせるように小さく甘く喘ぐ母を見ていると、いつも不思議な感情が湧いてくる。
夫と息子を持ちながら不倫した揚げ句、違う男の子を妊娠した母。
不倫の子を堕胎し父とやり直したいと縋る事も、かつての家族である僕を完全に捨てる事も出来ず。
そんな母の揺れ動く心を、罪悪感を、贖罪の念を僕は利用した。
僕はそれを自覚してる。
僕が利用している事も自覚している事も母も分かってる。
感情の清算と打算的な和解の方法として、母と僕の間にはセックスが介在してる。
母はセックスを提供する事でかつての罪と罪悪感を薄めてる。
僕はセックスを享受する事でかつての傷と怒りと性を昇華させている。
肉体としてのセックスは確かに僕達の間の何か薄い壁を一時的に和らげてくれる。
セックスは母にとって刑期のようなもので、僕にとって慰謝料のようなものだ。
代替が効かないから、ただ僕たちはセックスを重ねている。
母が僕の腕を握る力が強まってくる。
何度もぎゅっぎゅっと力を強めたり弱めたりしている。
それなりに気持ちいいんだろうか。
僕もすごく気持ちいい。
呼吸も荒く、顔色も紅くなっている。
小声だけど、少しずつ喘いでいる。
間もなく僕は母の中に射精を始める。
何度も精液を吐き出すリズムに合わせて母はその律動に合わせるように何度も小さく悲鳴を上げた。
既に閉経している母にとって膣内射精を受ける事はさほど問題じゃない。
ただそれでも勢いよく膣内に精液を吐き出し、母の子宮に送り込むたびに何とも言えない満足感が湧いてくる。
肩で息をしている母は何とか呼吸を整えようと息を大きく吸っていた。
静かだけど母もまた肉体的には快感を感じているのか、僕を受け止めるように黙って僕の肩を抱き締めていた。
ゆっくり母の胎内から出ると先端に垂れ流れてくる感触を感じた。