第7話『パーカッションと応援太鼓』-2
……。
主導権の有無って主観に直結すると思う。 例えば生徒を鞭でしばかれてるとして、わたしが叩いてる時は全然平気。 でも、誰かがわたしの生徒を叩いてるっていうのは、見ていて痛々しいし気分が悪い。 要するに、わたし主導権がない時は、普段どうってことない大概の事が不愉快というか、不快に変わる。
応援団の練習でも、たまにだけど、見ているのが辛くなる。 太鼓を使った伴奏練習はそんな中の1つ。
「団員、太鼓ようそろぉっ」
「「牝忍!」」
團長の掛け声一下、Cグループの団員2人が地面に仰向けになる。 そうして腕で腰を支え、尻から先を真上に伸ばし、膝小僧で左右の足を交差させ、下半身で『X型』を作った。 爪先までピンと伸びて、綺麗で真っ直ぐな脚線、体操の『アンテナ』から足を交差させた格好だ。 2つの『X型』が揃い、もう1人のCグループ生な団員が並んだ『X型』に登る。 足を折り畳んで腿と胸とをくっつけて、手は膝小僧を抱え、顔は自分の股間にくっつけるくらいに丸まって。 一見すると『肌色の御餅』のようだ。 空中で丸まったまま4本の足に支えられ、プリッとしたお尻だけが膣ごと無防備に晒される。
3人1組で構成された『太鼓』。 叩くのは上級生。
その隣では旗手がマングリ返しになっていて、團長が先ほど埃を掃った団旗を徐にオマンコへ挿入する。 重さが20キロに達する団旗を膣だけで支えるのだが、締めつけが緩いと子宮の奥まで貫通するし、重さを分散しようと旗を傾けすぎればアッという間に倒れてしまう。 かといって真っ直ぐ旗を立てれば団旗自体がたなびかないため、20度以上傾けるのが不文律だ。 となればポルチオまで総動員し、旗のポールを誠心誠意締め続けるより他はない。 応援が始まってしまえば、旗を支えるのもバランスをとるのも、すべて旗手に一任される。
旗手の責任は、ある意味では團長よりも重いだけに、旗手に指名された団員が毎日欠かさず朝昼晩、膣圧特訓に2時間以上かけているのを私は知ってる。 バーベルを咥えて落とさないようスクワット、ゴム球を膣圧で破裂させるまでウンウン息む。 棒高跳びに使うポールを屋上でオマンコしてブリッジをつくり、ポールの反対側が地面につかないよう腰とオマンコをキープする――練習方法をアドバイスした当事者として、神妙にマングリ返しで旗を呑込むオマンコを眺めるたび、ちっちゃな割れ目の奮闘を祈らずにはいられない。
旗が無事に風にはためき、高々と掲げられたところで太鼓が始まった。
パァン、スパァン、パァン、スパァン。
やや湿った乱打に聞こえるのは、撥に沁みこんだ膣液のせい。 それにしても、筒に張った皮を叩くならまだしも、ごく普通のお尻を撥で叩いてこれだけの音を響かせる……どれだけ強く叩いているか、想像するだけでお尻が痛くなる。 ついわたしのお尻を押さえちゃうくらい。
パァン、スパァン、パンパンパンパン……。
「うわっちゃぁ……ひどいなホント……」
つい団員の様子を窓越しに見てしまった。 音を聞いているだけでも痛いのに、いざ叩かれてるお尻の様子――既に桃尻を通り越し、一部は撥の形に痣が浮かんできて、青紫がジワジワ広がりつつある――を目の当たりにすると、何もコメントが浮かばない。 学園生徒である以上散々お尻は叩かれてきたし、これからも叩かれまくるわけだし、わたしだって耐えてきたんだから彼女たちもきっと耐えてくれるんだろうけど……分かっていても眉が自然に顰まっちゃう。
パァン、パァン、パパンパンパン……。
「……ふうっ。 同じ生徒同士、もうちょっと手心加えてもいいのに。 あんまり手を抜いたら、そりゃあわたしも叱るけどさ……」
「めッす、めッす、めッす、めぇッす!」
一挙動ごとに気合を入れ、太鼓と共に応援を刻む團長に、太鼓を窘める様子はない。 もっとも現役団員にしてみれば、あの程度の尻叩きなんて、どうってことないのかもしれない。 白手袋をはめた両手で乳首を摘まみ、臍に力を籠めたまま四股を踏み、膣、クリトリス、そして乳首を交互に突きだす伝統の『応援演舞』だ。 やっていることは自分の持ち物を開帳、開陳するだけ。 ところが動き1つ1つに力が籠ってキレが出ると、1種の芸に昇華し、もはや猥褻さを微塵も感じさせなくなるから不思議だ。
「やれやれ」
わたしは応援団が常備している救護箱から、2種類の塗り薬――冷却剤と消炎剤――を用意した。 炎症直後に塗布すれば、大概の内出血は即座に鎮めるスグレモノ。 ただし練習を終えた団員を普通に労(ねぎら)う、乃至労(いた)わるのはご法度である。 応援団たるもの、すべて気合で解決するのが王道であり、安易なサポートは禁物だ。
「あとは、どういう口実で塗るか、かなぁ。 痛みを取るため、はやく治すため、なんていったら『気合で治します』なんていいそうだし……そういわれちゃうと、こちらもどうしようもなくなるんだよなぁ……無難に『尻が弛んでるから』にしようかな。 で、平手でお尻を叩きながら、ついでにお薬を塗っちゃう、と……これなら上級生の顔もたつし、わたしの面子も傷つかないし……」
誰もいない部室で独り言。 窓からチラチラと靡(なび)く旗を眺めつつ、わたしは掌に、ちょっぴり多めに塗り薬を仕込むことにした。