第2話『体幹トレーニング』-2
「そうですよね。 舌で対応なんて横着せず、きちんとクリマンコで測定するべきですよね……勉強になりました」
「宜しい。 ところで、なぜ舌でしたいと思ったの? 私の授業のときはクリトリスでピッタリ調整してたでしょうに」
「あ、は、はい。 あの、理科係の18番さんが、次の実験準備で大量の試薬をクリマンコで調整してたので、クリマンコで手伝ったんです。 ちょっとでしたら実験机に登って、チツマンコを試薬につけるのも苦じゃないですが、クラス全員分、35回調整するのは正直苦しくて。 あと、18番さん――じゃなくて、私のクリトリスが小さすぎて……試薬に浸し辛いのもあって それで、舌で調整させてもらえないのかな、なんて思いました」
ハキハキとした、淀みない返事だ。 視線を22番の股間に下ろす。 プルン、サクランボ大な、ややくすんだ桃色をしたクリトリスだ。 捲れた包皮から、つつけば弾けそうに瑞々しい球が露わになる。 とてもビーカーにつけ辛いようなサイズには見えない、立派なクリトリスだ。 おそらく先ほどの『私のクリトリスが試薬に浸し辛い』というのは、18番を気遣うがゆえの言い訳だろう。
「試薬の調製を、舌でしたい? お前、いままで事前準備もクリトリスで測定してたの? そんなもの、わざわざクリトリスを使う必要ないでしょう。 中和滴定用のガラス器具を一式、もってきて使えばいいじゃない」
「……え?」
キョトン、目を真ん丸にする22番。
「自分自身が『器具』なときは、最も効果的な『器具』になるべく振舞わなくちゃいけないわね。 今回は『pH測定器』だから、舌よりもクリトリスで測定するのは当然ね。 でも、自分自身が『器具を使って何かする側』なら、わざわざ自分の身体を使う必要なんてありません。 誤差がすくないガラス器具――中和滴定だから、ビュレット、ホールピペット、メスフラスコ、電子天秤あたり――を使う方が、実験精度を上げる意味でも、正しい選択です」
「え、ええ……? そ、そうなんですか? 私たち、いつでもクリマンコを活かさないといけないんじゃないんですか??」
パチパチと大きい瞳を何度もしばたたせ、斜め下から私を凝視してくる。
「当然です。 自分が『器具』なのか『実験者』なのか。 立場によって行動指針は変わる。 試薬の準備を任されたなら、適性数値の試薬をつくることが最優先で、しかも、誰もお前たちに『器具』の役目を求めていないなら、わざわざ自分のクリトリスで濃度を測る必要がありますか? どうですか??」
「……ない、と思います」
「でしょう? だったら、お前達がどんな風に実験準備をすればよかったか、答えは明らかです。 今後はもっと状況をよく見るように。 そして、自分に求められる役割を的確に把握すること」
「ち、チツマンコの奥でマン汁垂らして反省します。 状況判断、出来ていませんでした」
「社会に出るには、状況判断が何より大切な能力ですから、折に触れて励みなさい。 では、私はこれで」
「……肝に銘じます。 ありがとうございましたっ」
がに股のまま何度も頭を下げる少女を尻目に、私は教室を後にした。 予定をオーバーして色々喋ってしまった気もするが、まあ、22番の健気さに中てられたせいにしておこう。 喋りすぎかもしれないけれど、少なくとも嘘はついていない。 もしも管理職に『教え過ぎ』と咎められたら……その時はその時だ。
それにしても、ちょっぴり驚いた。 てっきり私が見ていないところではオマンコを使わずに実験器具で横着してるだろうと思っていたのに、愚直に言う通りにしてたのか……半年も学園生徒をしてるんだからCCカメラの死角くらい把握して、手抜きしようと思えばいくらでも出来る筈だろうに、バカ正直というか何というか……。
同じ学園生徒でも1・3組とは毛色が違う。 1組なら多少ズルをしてでも手っ取り早く、3組なら手間暇かけずに要領よく取り組んだことだろう。 2組の生徒達……担任しておいてなんだけど、何とも不思議な生徒たちだ。