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女王と俺の奇妙な日々
【ファンタジー 官能小説】

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邂逅-1

 王宮はエメラルドで造られていたのだった。俺はルルッタラに伴われ、廻廊を抜けた大部屋に到った。途中、立っていた何人もの女たちがルルッタラに指示され、どこかへ去っていった。ここに集まる人だかりは、女たちに知らされて出来たものだろう。
高くなった中央に椅子が設えてある。中央と言っても、その後ろ側には、やはり高い花道のようなものが続いて、壁の奥に通じている。
鐘が鳴った。丁度、ギリシャ正教会に似た明るく賑やかな響きだった。
かなり離れて、ルルッタラと俺は、高い椅子のある正面に立っていた。人だかりは椅子までの距離を両側に空け、道を作っている。女ばかりだった。混血の民族なのだろうか。肌も髪も色合いがさまざまに違っていた。みな一般人には見えないなりだった。ルルッタラのような半裸か、派手な色の貫頭衣と装飾品という出で立ちだ。
「Jen nia reĝino. 」
(女王だ)
大きな声が聞こえた。
見ると、いつのまにか色白の小柄な女がいて、高座に腰掛けようとしていた。これはルルッタラのような半裸だが、衣装は金色に白と鮮やかだった。冠は無く、ただ、輪のようなものを額に巻いていた。
「Venu ĉi tien! 」
(こちらに来い)
女王だという女の明るく澄んだ声が俺たちを呼んだ。呼ばれた俺たちは歩き始めた。緊張の余り、ルルッタラは途中、俺と手を繋いだままなのに気づかず、女王の近くまで来て急にぱっと離した。そこから更に俺は段を上り、ルルッタラは残った。
二十一だと聞いていた女王の顔は、もっとずっと幼く見えた。腰掛けている体も小さいようだった。
それにしても、こんなに美しい顔を見たことが、写真ででも一体あったろうか。染めているのか、ブロンドの変わり種なのか、髪が深緑色だった。鷹に似た黄色い瞳は、俺を射抜くような鋭さだった。
人の目を見ることは嫌いなのに、女王の目から視線を逸らせられない。全身から放たれる威圧感で俺は動けなくなっていた。
女王の目の下に隈があった。病気だろうか。そう思わせる顔のやつれようだった。
いきなり立ち上がった女王は、俺のほうへ近づいてきた。やはり小柄で、背が俺の肩辺りまでしかない。
「Do, vi estas la viro. 」
(さて、お前がその男か)
言うと女王は俺の首に腕を回し、背伸びして口づけした。人の心理とは奇怪なものだ。咄嗟にこのとき思ったのが、このやつれた女には口臭があるのではないかということだった。俺は身構えたが、女王の唇が触れると、その気持ち良さに我を忘れてしまった。
挨拶とはとても思えない長い長い口づけだった。これだけ男に熱いキスをする女もいないのではなかろうか。女王の絡みつく舌と、肌に当たる乳房、また強い女のにおいに俺の体は興奮した。それを感じたらしい女王はゆっくりと唇を離した。
俺は気まずくて、女王の反応を顔に伺おうとした。女王の目の下の隈が無くなっていた。そして、花のような笑顔を女王は俺に向けた。
「Vi estas vere viro! 」
(本当に男なのだな)
瞬時に、腰の布が剥ぎ取られた。そして、勃起した全裸の俺を女王は会衆に示して言った。
「Nun, mi reviviĝos ! Kaj mi ne plu perdos la forton. Tiu viro estas edzo por ni ĉiuj! 」
(これで私は甦るだろう。そしてもう力を失うことはない。この男は私たち皆の夫だ)
歓声が上がった。
女王に肩を抱かれながら奥へ向かう去り際に、ルルッタラと目が合った。ルルッタラは悲しそうな顔をして、いとしげに自分の女のところへ手を当てていた。


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