再びの夏-1
また、夏がやってきた。
8月の晴れた朝。
ちづるは昨日からタクミの家に
泊まりに来ていた。
9時頃、
いつものようにちづるは
タクミの家のキッチンに立ち、
朝食を作る。
キッチンに置いてある
小さな2人用のテーブルに
出来上がった朝食を並べ置く。
一旦、ちづるは部屋から出て
隣のタクミの部屋に行く。
部屋のドアを開けながら
ちづるがベッドの上のタクミに
声をかける。
「ご飯〜〜 出来たよ。 」
寝ていると思っていたが、
タクミは起きていた。
ベッドの上であお向けになり
左手を頭の下に入れて
右手にはスマホを持って
画面を見ている。
操作に夢中な様子で返事はない。
「 ご は んーーー。
出来たよ〜? 」
ちづるは部屋には入らず、
タクミから自分が見えるように
ひょっこりと顔を出している。
「 んーーー?? 、、うん、」
タクミは言われて
起き上がろうとするが、
スマホの操作は続けたままだ。
黒いハーフパンツに
グレーの半袖のTシャツを着た
タクミは、寝癖のついた頭で
大きなあくびをしながら
遅い動きで上半身を起こし、座る。
立ち上がると
隣の部屋にやってきた。
キッチンでは
ちづるがまだパタパタと、
作業をしている。
髪の毛はおだんご頭で
紺色のノースリーブの部屋着の
ワンピースを着ているちづるの
後ろ姿を、ほんの少しだけ
ぼんやりと眺める。
部屋の入り口に突っ立っている
タクミに背を向けたまま、聞く。
「今日も暑そ、、。
冷たいの飲もっか〜?」
「、、、 、 、」
「 、? どしたの? 」
ちづるは振り向き
きょとんとしている。
「、、んーーー? 別に。
今日も小さいね。 」
「ぇ? 、、 ? 」
「 背が。」
「 、、もーー、、 ふふっ
ほら、 食べよ? 」
「うん。」
冷蔵庫から紙パックの
アイスレモンティーを取りだし、
氷の入った2つのグラスに
それを注ぐ。
2人はイスに座ると
いただきます、と言って
朝食を取り始めた。
ちづるは食べながら
テレビを観る。
キッチンの隣のリビングは
ほんの少しだけ整頓された。
7畳ほどのフローリングの奥に
洋服ラックが2つ置いてある。
その部屋に、
ちづるの家に以前置いてあった
大きめのテレビと、
テレビ前には茶色の
ソファーが置いてある。
ご飯を食べる時は、
キッチンから
隣の部屋のテレビを見る事が多い。