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原爆の夜
【幼馴染 官能小説】

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原爆の夜-3

3.
夏が近づいてきた。

放課後は、村の鎮守様の境内で、高等科の先輩の指導で軍事教練をした。

竹ざおを6尺に切った杖(じょう)を鉄砲に見立てて、「捧げ杖」「立ぇ杖」「担え杖」「右向け右」「前え進め」などの号令で動き回った。

一通り済むと、手旗信号の訓練をした。カタカナの文字を、左右の旗で形作るのだ。

ある日、隣村の学校まで伝令の訓練をすることになった。

伝令書を竹筒に入れ紐をつけたものを背中にしょって、隣村まで駆けるのだと言う。

「ヒデオ、おまんが行け」
校長から指名をされた。

背が高いから、走るのが速いだろうと言うことだった。
僕にはとんでもないことで、走るのはもっとも苦手で、運動会は死ぬほど嫌いだった。

軍国少年としては、苦手だからなどという理由で校長の命令を断ることは出来ない。
校庭を、校長以下在校生の見送りを受けて、颯爽と走り出た。

村はずれの坂を登ると、いつも訓練をしている鎮守の森に差し掛かる。
鎮守様に続く石段の下に、冴子が座っていた。

「おまんが伝令に行く聞いて、待っておったんよ」
「ありがとう、嫌なんじゃが断れんし」
「がんばってねえ」
「ああ」
「後で、逢えるかなぁ」
「ええよ、本堂の前におるすけ」
「気いつけてなぁ」
「うん」

冴子といつもの鎮守様の境内で待ち合わせの約束をしたヒデオは、勇気百倍の元気を取り戻した。

峠を越えて、川沿いの道を上流の村に向かって走った。

途中、疲れると川原に降りて川の水を飲んだ。セキレイが、美しい尻尾を太陽に煌かせながら、川原の石の上を飛び回っている。近くに巣があるに違いない。

冴子の顔を思い浮かべながら、必死に走った。




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