セイフクノカノジョ-4
ルカの悲鳴に慌てて引っこ抜き、放出した白濁液はストッキングとスカートだけではなく、ベストの背中も汚した。
「あーぁ、制服も布団もえっらいことになっちゃったなぁ」
下手にティッシュなどで拭き取るよりは、水で洗い流したほうがよさそうだ。自分の後始末を済ませながら、崩れ落ちたままのルカの呼吸が整うのを待って、制服を脱がしにかかる。
「やだ、電気消して」
「今日はダメって言ったろ?それに暗くしたらさらに被害拡大するぞ?大人しく脱がされなさい」
ふてくされた顔すらいとおしいと思うのは重症だろうか。妖艶さが抜けて、子供みたいなルカを裸にむいていく。
「このまま一緒に風呂入るぞ。たまにはオジサンの背中流してください」
とりあえず汚れが飛び散らないように一纏めにした脱いだ服とシーツをルカに抱えさせ、自分がルカを抱えて風呂場へ運ぶ。トイレに行ったり、風呂に入る準備をしている間にルカがあらかた水洗いをしてくれていた。
「ごめん、ありがとな。風呂出たら洗濯機回すから」
少し冷たくなった身体に温かいシャワーをかけてやると、抱きついてきた。
「こらこら。そんなにひっついたらまたおっきくなっちゃうぞ?」
「どんだけ元気なんですか?」
「ルカとなら何発でも出来る気がするってのは冗談だけどな。最近ずっと会えなかったし。会えない時用にさっきの動画撮っておけばよかったなぁ」
「そんなん撮って何に使うんですか?」
「もちろん一人エッチのオカズですよ。風呂出たら撮らせてくれる?」
「ぜーったいにイヤですっ。動画も中出しも絶対にイヤですからねっ」
ぷくーっと頬を膨らませ、こちらの頬をつねる。
「中出しもダメかぁ?」
「当たり前ですっ」
「そうか、ダメかぁ」
「そんなにしょんぼりした顔してもダメなものはダメです」
身体を離すと、シャワーヘッドを奪い取り、こちらにお湯をかけてくる。あらかたかけてもらうと、今度はこちらがシャワーヘッドを受け取った。
「身体、冷えちゃったな。大丈夫か?」
「大丈夫です。謙一さんが温めてくれるから」
「ルカさん、それはもう一回しようっていうお誘いですか?オジサンはもうそんな体力残ってないぞ?」
ルカがここに来るようになってから、ボディソープだけは男性用のものからユニセックスのものに変えた。シャワーヘッドを固定させて、それを手のひらに拡げて泡立てる。ルカの首筋を洗い、背中に手を滑らせると、くすぐったそうに肩をすくめたが抵抗らしい抵抗もせず、されるがままだ。
「私ももうそんな体力残ってないですよ」
「仕事、やっぱり忙しいんだろ?なぁ。落ち着くまでここから通えば?」
「え?」
「通勤時間短縮できるだろ?それだけでもちょっとは身体は楽になるんじゃないか?まぁ、こうして違うことで体力消耗させるかもしれないけど」
きゃぁっ、と短い悲鳴を上げたのは、突然胸を掴まれたせいだろう。付き合う前はここから5分くらい歩いたアパートに住んでいたが、今は片道1時間電車に揺られて通勤している。諸事情で、元は親戚が住むはずだった分譲マンションで一人暮らししているのだ。
「ルカにはルカの事情もあるんだろうし、毎日とは言わないけどさ。こっちもまだバタバタしてるから同じタイミングで帰れる訳じゃないけど、ルカがここで待っててくれてるって思ったら、オジサンも頑張れるしな」
本当に伝えたいのはそんなまどろっこしいことじゃなくて、落ち着くまでなんかじゃなくて、ずっと一緒にいたいのだけれど。
「…お言葉に甘えてもいいですか?」
ちょっとの間のあと、ルカはおずおずと近寄ってきてこちらの背中に細い腕を回すと、そう言った。
「いっぱい甘えてください。オレも甘えさせて」
胸に顔を埋めたままこくん、と頷く。
「調理器具用意したら、メシ作って待っててくれる?」
「あんまり遅いと先寝ちゃいますよ?」
「いいよ。ルカの寝顔見れるだけでも。明日買い出しに行こう。レンタカーでも借りて、ついでにルカんちに必要な物取りに行くってどうだ?」
腕の中で、いいですね、と笑う彼女にいとおしさが込み上げてきて、額にキスを落とした。それからお互いの身体を洗いあって、拭きあって、バスタオルを巻きつけたままで、キッチンで一服。こちらのあくびにつられて、ルカがあくびを噛み殺す。
「そろそろ寝るか?今代わりのシーツ敷くからちょっと待ってて」
一瞬でルカの耳が真っ赤になる。きっと代わりの物を用意しなければいけなくなった理由を思い出したのだろう。
「ほら、おいで」
初めての時のように緊張した面持ちで近寄ってきたルカを抱きよせ、キスをしてから照明を落とし、横たわらせた。隣に横たわり、腕枕をして眠りについた。