第五章 見て、私の-2
「あら、ナツミちゃん、転んだの?」
一瞬、二人とも凍り付いた。
「そ、そうなんですよ、店長。そそっかしいやつでしょ。」
ナツミは店の奥の方、つまり店長に背中を向けている。ちょうど転んだように見えるはずだ。彼女は何事もなかったかのように立ち上がって店長の方を向いた。
「おはようございまっす!」
「あら、可愛いハンカチ使ってるのね。」
…俺の手にはナツミが脱いだばかりの、まだ微かに温もりを感じる下着が握りしめられていた。
「そ、そうなんですよ、姉さんのを間違えて持ってきちゃったんです。」
「そうなんだ。ちょっと見せてよ。」
「いや、あの、これは…。」
「店長、コイツのハンカチなんか見ない方がいいよ。絶対ドロドロに汚れてるから。」
おいおい、お前のだぞ。
「あら、そうなの?ふーん。」
店長はバックヤードに入って行った。
「ふう。」
「なかなかスリルあったね。」
「あのー、このドロドロに汚れたハンカチ、どうする?」
「どう、って?」
「貰ってもいい?いつでもナツミのそこを思い出せるように。」
「思い出してどうするのよ。」
「それ、訊く?」
「バカ…。」