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《夏休みは始まった》
【鬼畜 官能小説】

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〈戻れない夏〉-9

「男なんて子供と変わらないわよ。あまりチヤホヤすると直ぐにイイ気になって勝手な真似するんだから。ちょっと上から目線で接するくらいでちょうどイイのよ」

「はあ〜…私も麻衣さんみたいな付き合い方が出来たらなあ〜……いっつも私の方が子供扱いされて……ブツブツ……」


この会話を聞いていても、麻衣は大人の女性で里奈は子供の女の子だ。
その対比は初めて出会った頃から全く変わっておらず、それは意地悪な言い方をすれば里奈の成長の無さの表れでもあろう。


「さあて、もう一っ風呂浴びてこようかな?かき氷食べて身体も少し冷えたし」


麻衣はスッと立ち上がると新品のタオルを取り出し、そして新しい下着をくるんで襖を開けた。


「里奈、他にも何か聞きたいコトがあったら考えて纏めといて。夜はまだ始まってないんだから」


女子が話を始めたなら、その終わりが見えないくらいの長話になるのは誰でも知っている。
麻衣はもう一度温泉に入りに行く事で、一旦会話を中断させたのだ。


「う〜ん……聞きたいコトなんていっぱいあるし……纏めるって言ってもなあ……」


里奈は畳の上に大の字になって、難しそうな顔をして天井を眺めた。

その時初めて、この繋がっている二つの部屋の天井の造りが違う事に気づいた。

上がり間のある方の部屋の天井は、綺麗な化粧板が嵌められているのに、隣の部屋の天井は梁や桁が剥き出しの状態になっていたのだ。
煤けた木材は黒く光り、その複雑ながらも計算され尽くした組み込みは、やはり古い建築物特有のもの。


「……昔の大工さんて、やっぱり凄いんだね……」


ジャンプすれば届きそうな高さの桁を見ながら、なぜ今まで天井の違いに気づかなかったのか里奈は不思議に思った。

……外の日射しは若干の弱まりを見せていた。
喧しいアブラゼミからバトンを受けたヒグラシが、郷愁を誘うメロディーを奏で始めた。


{カナカナカナカナ……}


不自然にも会話のない奈々未と真夏と、再び沈黙した里奈のいる和室には、静かな時だけが流れていた……。





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