母の仕事-5
<next>クリック。
母は撮影されていることにようやく気付いたのか顔だけ振り向いて少し驚いたような顔をしていた。
黒のブラジャーが露になっているが、もう胸を隠す様子はない。
<next>クリック。
下着だけになった母はベッドサイドに立って、完全にカメラを向いていた。
それはカメラのレンズを通して僕を見つめているような錯覚さえ覚える。
はにかんだような表情だが、はっきりとその瞳は母の意思を感じ取ることが出来た。
…ここで悟に迷いが生じた。
今、これ以上やめておけば。
もうこれ以上は見る必要もない。
多分この管理人は母のことなどただの商売女だと思っている。
ここで止めておくべきじゃないだろうか?
見て何になる…それにこれ以上見てしまったら悟には途中では止められない予感がした。
いや、もう止まれないところまで来てしまっていたのかもしれない。
震える手で悟はマウスを握り直す。
<next>クリック。
それは今までの陶子を映していた画像とはまったく違うものだった。
近すぎて焦点がぶれているため、何の画像かわからなかった。
それはまったくの至近距離から陶子と…誰だか顔が見えない黒い短い髪の見覚えのない男が唇を重ねていた。
目を閉じたままの陶子はうっとりしているようには見えないが、明らかに自分の意思で瞳を閉じているとわかった。
…悟は喉の奥に何かが詰め込まれていくような感覚だった。
頭の片隅で分かってはいたことだが、実際に画像で見せられる事とはまるで別だった。
まるで隙間なく重ねられた唇…まるで家族の入る隙間などないというように。
<next>クリック。
悟の絶望が深まる。
少しだけ離された唇の隙間には二人の(二本の)舌が絡められているのがわかる。
母はずっと瞳を閉じているのでその表情は測りきれない。
それでも少なくとも陶子は…強制されている訳では、ない。
<next>クリック。
陶子と思わしき女性がベッドに横たわっていた。
カメラは女性の下半身側から撮影されているため、今までで最も陶子のそこ…悟にとって自身の母親が女性であることそのものが映っている。
赤というより赤黒い茶色の唇型の肉がはみ出し、その両側の唇を母は自ら…そう自ら押し広げカメラに女性自身を収めさせていた。
悟はついそれを口をポカンと馬鹿みたいに開けて眺めていた。
もう何かを考える事等出来なかった。
こういう事をしていると知っている事と目の当たりにすることはまったく別だった。
悟にとって生まれて初めて見る女性のそこは、実の母親のそれで…悟にとって生涯最も特別な神聖な母なる女性のもので…。
<next>クリック。
真正面からベッドに横たわっている母を捉えた画像。
苦しげにも見える表情で眉間に皺を寄せながら、両手でシーツを握って堪えるように…身悶えていた。
組み敷かれた母の上半身には撮影者の影がかかり、男は上から覆いかぶさるようにシャッターを押しているようだった。
明らかに、陶子は、母は、間違いなく、胎内に男を受け入れている。
画像は下半身にまでカメラが向けられていて、その画像にはカメラを持っていると思われる男の下腹部と母の下腹部が重なり、繋がっているのがはっきりと分かる。
<next>クリック。
母一人がベッドに取り残されている。
両脚をだらしなく開かれており、その中心からは…。
男のモノとしか思えない白い樹液が垂れ流れている。
母はぐったりとして両腕で目を覆っていた。
<next>クリック。
よりアップで捉えられた母親のそこ。
赤黒い母の膣と、実の母親の胎内から流れ落ちる真っ白いモノ。
いつか母親に連れられて行ったどこかの喫茶店の生クリームのようだった。
いつしか悟の目からは涙がにじんできていた。
この涙はいったいなんだろう?
自分でも分からない。
<next>クリック。
<next>クリック。
<next>クリック。
…。
母は従順に撮影者に従ったのだろう。
男のモノを口に含み、カメラ目線を送る母。
四つん這いになって尻を高く上げて誘うようにカメラを見つめる母。
そのままの体勢で膣奥に射精されたらしい白濁液が流れ出ている母。
バスルームでユニットバスに腰掛けた体勢で両足を開く母。
そのまま母の中心から黄色い放物線が描かれて…自らのおしっこの行方を見下ろす母…。
「やっぱり締りはイマイチですた…マグロ気味なのも減点。せっかくまずまずの美人なのになぁ>。<」
そんな管理人の最後のコメントを振り切る様に悟はもう充分に思考が出来ないまま、ウィンドウを閉じた。
家に帰りついた悟は陶子と顔を合わせられなかった。
そんな息子の様子を見て、陶子は少し違和感は感じたもののそれ以上追及しようとはしなかった。
陶子にとって「あれ」は特別な事じゃないのだろう。
自分が知らなかっただけで(知ろうともしてこなかっただけで)、あんなことはずっと週に何度も何度もやってきたことなのだ。
でも、あれは、俺のためにしていることなんだな。
悟はそう思う。
…だから、そのやりきれない思いは怒りではなかった。
完