♥なかなか素敵な男♥-5
「ちょっと、やめて下さい。あたし、天野くんなんて全然タイプじゃないもん」
「ふーん、あの子はすごくあなたのことを好きってのがダダ漏れしてたけど?」
ブルータス、お前もか。
初対面のこの人にまで悟られるなんて、天野くんはどんなにわかりやすい男なの。
「……ああいう暑苦しいのは無理なんです」
それでも天野くんの気持ちは迷惑でしかないあたしは、照れることすらしないで無表情のまま。
「ふーん、勿体無い。今年のコンテストのテーマは“恋”だし、いっそあの子と恋しちゃえば面白いのに。アナタ、どうせ今は誰も好きな人なんていないんでしょう?」
「……なんでそんなこと言うんですか」
「うーん。心が空っぽな感じがするからかしらね」
「え?」
「なんて言うのかな、お人形みたいなのよ。どこか冷めた感じっていうか……。だからアナタみたいなタイプには、ああいう熱血タイプがお似合いだと思ったんだけど」
胸の内を見透かされたような気がして、サッと身体の血の気が引いた。
どこか冷めた感じ。
昔はこんなんじゃなかったはずなのに。
ーーこんな家をさっさと出て、二人で暮らしたい。
ーーこの指輪も捨てられたらどんなにいいだろうか。
また、あの男の事が脳裏に浮かんで、こめかみがズキンと痛む。
あんな男の姿を見てきたあたしが、もう恋なんかで浮かれるほど無邪気になれるわけがない。
鈍痛に顔をしかめそうになるけど、悟られないようにニッコリ笑う。
そしてあたしは、バッサリ一言。
「嫌です、そんな手っ取り早く天野くんと恋なんてしたくもない」
恋とか愛とか、くだらない。
吐き捨てるように呟くあたしを、なぜか天童さんはニヤニヤしながら見つめていた。