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bitter bitter sweet
【コメディ 恋愛小説】

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♥なかなか素敵な男♥-6








「はいはい、また話が脱線しかけてる。時間もあまりないんだし、ヘアスタイルは後回しにするなら先に衣装合わせからしましょうか」


天童さんの声でもなく、小野寺くんの声でもない声が聞こえた。


その声は、店の奥の方から聞こえてきて、ヌッと人影が現れるのを鏡の隅で確認したあたしは、なんとなしにクルリと後ろを振り返り……そして、思わず目を見開いたまま固まった。


だって、だって……!!


「……何よ」


声の主は、どことなく不機嫌そうにあたしを見るけれど、そんな素っ気ない態度すら気にならないほど。


だって、すっっっごい美人なんだもの!!


筆舌尽くしがたいってのはこういうことなんだ。


とにかく目の前に現れたのは、言葉で言い表せないほどの美女だった。


小野寺くんも美形だし、天童さんもかなりのイケメンなんだけど、この人は、もはや次元が違っていた。


女優レベル……それもトップクラスと言っても誰もが疑わない、それほど美しい人だった。


「ヒロー、せっかくのコンテストのモデルにそんな態度はないでしょう?」


「だって、この娘がバケモノを見るような顔で私を見てくるんだもの」


天童さんに『ヒロ』と呼ばれたこの女性は、サラッサラのロングヘアーをかき上げては、もう一度あたしをひと睨み。


その鋭さに思わずビクッと身体が跳ね上がった。


美しい……けど、怖いよこの人!!


「違う違う! きっとあんたが綺麗過ぎるからビックリしてるだけなのよ。でしょう、里穂ちゃん?」


天童さんが無邪気に笑いながらあたしの気持ちを代弁してくれたけど、あたしはヒロさんの鋭い視線に、ただただ頷くことしか出来なかった。


だけどその刹那、彼女が唇の端を少しだけ上げて、


「……そ」


と、こちらを見たので、今度は心臓がドックンと高鳴った。


はーっ……。すんごい美しい……。


ほんのちょっと笑いかけられただけで涙が出そうになる。


この人の本物の美しさに圧倒されたあたしは、ポカンと口を開けたまま固まっていた。


「ヒロさん、今日も綺麗!」


すると、小野寺くんが尻尾を振った犬のようにヒロさんの元に駆け寄っていった。


小野寺くんを見たヒロさんは、一気に表情を柔らかくして、


「あんたもいつ見てもさわやかね」


と、優しく彼の頭をポンポン叩く。


側から見れば、なんてことのない美男美女のやり取りなんだろう。


ドラマのワンシーンのような絵をぼんやり見ていたあたしだけど、なんだかその光景に妙な違和感を覚えていた。




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