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祭りの日の儀式
【若奥さん 官能小説】

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受け継がれるもの-1

「で、結局はその日の内に謝ることになったんだけどね」
 22年前の顛末を、久美が語りだした。

「その日は、もう何をするにしても頭がボーっとしてて、手につかない状態だったのね。それで、いじけたようにトボトボと、近くの公園を歩いていたの。そうしたら、聖子ちゃんも同じように公園に来ていたわけ」
「そうそう。わたしも、どうしても心に引っ掛かってて、家でじっとしている気にもなれなくてブラブラと外に出たら、久美とばったり」
「お互いに一言めが、謝ろうって」
「2人でみゃーこちゃん家に行ったら、今まで寝てたのよぉって頭ボサボサのまま出てきて」
「そしたら玄関先でいきなり2人してゴメンナサイって頭下げるから、何事かと思ったわよ」
 料理は終盤戦にかかり、3種類のパスタがテーブルに並んでいる。
 美也子は、早くも2品目のホタテと水菜のパスタをぱくつきながら言った。
「だって、あの時は顔なんてとてもとても見られるような状況じゃなかったんだもの。ねぇ、久美」
「そうよ、どんな顔して謝ればいいんだろうって。もしかしたら、もう2度と顔を見せるなーって怒鳴られるかもしれないって。そこまで覚悟してたんだから」
「でもこっちは、そんなことになってるなんて丸っきり思ってなかったし」
「頭を少し上げて、チラッとみたら、みゃーこちゃんはTシャツ1枚で、しかもノーブラ。乳首がポチって見えて、それ見たらばあの光景を思い出しちゃって、再度ブルー」
「顔見たらば二人ともすっごい真剣な顔しててさ、何となく青ざめた感じだし。どうっしたの?って、こっちがびっくりしたわよ」

「震えながら何度もゴメンナサイって。そのうち涙声になっちゃってさ。私の方があたふたしちゃって」
「そうしたら、なーんだそんなこと・・・って」
「別に種岩でのぞかれたんだったら、それはそれで仕方ないことじゃない?別に見せつけようとしているわけじゃあないけど、自分たちの願いがあってやってることだし、他の人に見られたからどうこうってことにはなんないでしょ。それは、みんな一緒でしょう」
 プレイとしての野外露出SEXという意識は誰も持っていない。あくまでも自分たちの愛を確かめ合い、誓い、そして神に子を授かることを祈念する。単純にそのことしか頭にないのだ。
 そういう意味では、『神聖な儀式』と言ってもいい。いや、この地域の住民たちは、少なからずそう思っているに違いない。
「まあね、のぞきたいっていうやましい男もいるだろうけど、この辺の男ならそんな気持ちはないしね。興奮よりも習わしを重んじるように育ってきてるからさ。こと種の岩にかかわることには」
 今までほとんど発言していなかった奈々子が言った。
 雄弁なタイプではない奈々子だが、時々発する一言には、重みを感じることが多い。ルックス同様、理知的な人物なのだろう。
 半面とてつもなくスケベらしいが。

「でもそれがきっかけで、聡太との結婚話が進んでいったんだから、わたしにとっては感謝する出来事なのよ」
 水橋夫婦に子どもが出来るのは、この時の行為よりも後からになるのだが、周囲の、特に美也子にかなり近しい久美や聖子にバレたとなると、一気に二人の関係が公になる可能性が高い。
 当時、美也子はすぐさまそう感じた。
 今でこそ自分の迫力あるボディにコンプレックスなど微塵もなくなってしまってはいるが、当時は意外と気にしていた時期もあった。
 こと、聡太と付き合っていることに関しては、自分の身体へのコンプレックスもあり、なんだか聡太が色眼鏡で見られているのではないかと、勝手に思うことも多かった。
 あの聡太が、あんなデブと。と引け目を感じていた。
 だが、このことがきっかけでオープンになり、元々のおおらから性格もあってか、スタイルを気にすることもなく、みんなに祝福されての結婚に至ったことは、喜ばしい限りだった。
「そのきっかけを作ってくれた、久美と聖子には、感謝することはあっても、咎めたりするなんてことはあり得ないんだから」
 美也子は真面目な顔で言った。
「あれぇ!?今日はいつもと違って真面目じゃない?」
 当事者の一人である聖子が言った。
 いつもは違う展開になるのだろうか。
「そうそう、いつものパターンだと、お掃除フェラとかパイズリの話になるじゃない!?」
 真理恵もかなりスケベなようだ。次々と、卑猥な言葉を連発している。
 みなみは、またもギョッとした。
(お掃除フェラって・・・・・・)
 性の営みごとに関する知識に乏しいみなみ。
 これまでの話の流れと、言葉の内容から、恐らくはと思う行為が頭に浮かんだ。
 そんなことをあからさまに、あっけらかんと話すこの街の女性陣に、圧倒されっぱなしだ。
 だが、最初にビックリした時に比べて、彼女たちのスケベな発言に対して、理解もできるようになってきていることも事実だった。
 自分自身がそのような言葉を発することは、今の段階では恐らく無理だろうし、これからもそう簡単には受け入れられないだろう。
 でも、その反面、このような風土は、間違った性教育にはつながらないはずだという確信めいたことも芽生えてきている。
 子供への虐待事件を考えると、この街の性に関する接し方は、他の地域のナイーブさ加減、デリケートな扱いに比べれば、天と地のほどの差がある。
 あまりにもスケベな人間になってしまうのではとの心配もあるけれど、子どもを授かる意味の深さを、普通に育ちながら染み付いてしまうんだろうなとも思う。
 少なくとも、歪んだ見方をしない子供に育ってくれることが大いに期待できる町なんだろうなと、みなみは思った。

「だから、お掃除については、この間散々話したじゃない」
 久美は、その話はもういいじゃない、と言いたげだ。
「とりあえずは、みなみちゃんに種の岩のことを理解してもらってから、そっちの話にしようよ」
 まだ続くのか。


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