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祭りの日の儀式
【若奥さん 官能小説】

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受け継がれるもの-2

「いよいよ来月からは本格的にお祭りの準備だね」
 そろそろ締めの時間が近づいてきたころ、会長の真理絵が真面目に話をし始めた。
 ここにいる面子は、スケベな人間ではあるが、元来社交的で、ボランティア精神にあふれる、至極真面目な人たちだ。
 この焔人の会運営にしたって、強制的に出てきている者など誰一人としていない。
 全員楽しみながら、参加している。
 だからこそ前向きで、ポジティブな活動となり長続きしているのだなとみなみはいつも思っている。
「旦那たちはもっともっと忙しくなるからね。しっかり労わってあげること。通常の仕事があって、更にお祭り持ってことだから、溜まった疲れをしっかり癒してあげることが私たちの一番のお仕事ですからね」
 真理恵のこの言葉は、祭りの時には必ず言う言葉だ。みなみも何回も聞いている。
 そのたびに、この街の女性。特にここに参加している女性陣の背中に、「内助の功」の文字が浮かび上がっているように見える。
「ですから皆さん。SEXはほどほどに。疲れている時に、無理やり勃たせようとしないこと。自分の指で我慢するんですよ」
 結局は下ネタになるのがたまにきず。

「じゃーねー」
 男たちの討議も終わり、メンバーは夫婦仲良く三々五々家路についた。
 なかには周りの目を気にせず、手をつないだり、腕を組んで帰っていく夫婦もいる。それが恥ずかしいとか、そんな感情が沸かないのがこの街の普段の姿だ。

「ごめんね、みなみちゃん。もう少しいいかな」
 瀧本奈々子だけが、席に座ったまま、スマホを操作していた。
 店内を見ると、夫の臣吾と、奈々子の夫の尚春がまだ話し込んでいた。
「ああ、まだ打ち合わせしてるんですね。いいですよご遠慮なく」
「悪いね。あ、片付け手伝うね。気付かなくてごめんね」
「いえいえ、気にしないでください。ゆっくり座ってていいですよ」
「そんなわけにはいかないわよ」
 奈々子はクールに見えて、実はすごく面倒見も良く、色々と気の付く女性だった。
「臣吾ちゃんとうちの旦那は、看板設置の担当になったみたいね」
「そうみたいですね。よろしくお願いします」
「いーえ、こちらこそ」
 軽く頭を下げ、グラスを片付けに、一度みなみは店内に消えた。
 キッチンに戻る途中、何気なく夫たちの会話に耳立てると、もう少し時間が掛かりそうな雰囲気だと察知した。
 みなみは、スパークリングウォーターを片手に、テラス席に戻った。

「はいどーぞ。まだまだかかるみたいですから」
「ありがとー。嬉しいわぁ。何で私がスパークリングウォーターが好きなの知ってるの?」
「えーとですね、何度か買って飲んでるの見かけたことあるし、こういう商売してるとお客さんの好みをチェックするのが癖になっちゃうんですよね。それで、ついつい何飲んでるのかなぁとか、あれ一杯食べてるとかを見ちゃうんです」
「へぇーある意味職業病みたいなもんなんだ。それにしてもよく分かったなぁ、私が精子の次に泡水好きなの」
 みなみは奈々子の言葉を聞いて、口を開けたままポカンとしてしまった。
(一番好きなのが精・・子・って??)
 スパークリングウォーターを泡水と表現することにも変わった感じがするが、精子という単語があまりにも衝撃的で、呆然とするしかなかった。
「ああ、ごめんね。ついついいつものように口走っちゃって。あのメンバーだと違和感なくても、みなみちゃんはまだまだ温室栽培で育ったまんまだったね」
「あ、ああいえ・・・・・・うーんと・・・・・・」
 口籠ってしまうみなみ。
「いーのいーの無理しなくて。ここにいる奴らは、小さい頃から性的表現に触れてきてるから、自然に聞き流してるけど、普通だったら頭おかしい奴らだって思っちゃうよね」
 みなみが思っていることを全部奈々子が言ってくれた。そう。まさにその通りなのだ。
「ま、そのうち慣れるわよ。慣れなくてもいいけどね」
 フフッと、上目遣いの超美人顔で微笑まれると、どんな男でも虜にさせてしまうに違いない。
 その美人の口から、まかり間違っても『精子』や『オマンコ』などの卑猥な言葉が発せられようとは、夢にも思わない。
 だが現実は、ここに集まるエロエロな精鋭たちの中でも、群を抜いてスケベなのがこの奈々子なのだ。

「あー美味しい。シュワっと感がハンパなく快感よね。オマンコの快感には及ばないけど」
 奈々子の一言一言が卑猥極まりない。いや、下品極まりない。
「そーだ、泡水のお礼にいいこと教えてあげる」
 そう言って、奈々子はみなみの耳元の口を近づける。内緒話のような格好になった。
「円満な家庭の秘訣は、床上手な嫁の存在よ」
 みなみは一瞬理解できなかったが、少し考えると、奈々子の言いたいことがわかった。
「スケベで一途な奥さんになりなさいってこと」
 よく料理上手で、夫の胃袋を掴むと良いと聞く。
 結婚披露宴のスピーチなどで、『男には5つの袋がありまして・・・』で始まるお馴染みの話に出てくる例の件。
 昔から言われ続けられているということは、信憑性が高いということなのかもしれない。
「恥ずかしがらなくていいんだから。自分のスケベな部分を旦那に曝け出しちゃうと、すごーく楽になるのよ。まあ、私の場合は最初から曝け出しまくりだったけど」
 奈々子曰く、人間誰しもスケベな生き物なのだから、恥ずかしいなどと思わずに、お互いが気持ち良くなることで、二人の仲も深まり、長続きもするということだった。

 奈々子のような考え方は、突然変異として現れたものではなくて、この地域で育った人たちは、知らず知らずのうちに、そう言った意識が植え付けられ、代々受け継がれてきているのだなと、みなみは思った。


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