♠性悪女♠-8
「始めは顔だったよ。客としてスウィングに行った時、レジ打ちしてるアンタを見て、すんげぇ可愛いって一目惚れだった」
照れ臭さはあったけど、どうせコテンパンに振られた身だ、今更自分を飾り立てても仕方あるまい。
今の俺には失うモンは何もネェ!!
「何とかアンタと知り合いになりたくて、たまたまスウィングのバイト募集の貼り紙見て、これしかねぇって、バイト申し込んだ」
「へぇ、そうだったんだ」
「最初こそ、外見から入ったけど、アンタの仕事がテキパキ出来るとこ、明るくてみんなにニコニコしてるとこ、オシャレなとことか、色んな松本を知って行く内に、どんどん好きになってったんだ」
「うんうん」
「で、今日必死の思いで告白して、見事玉砕した」
振られた時の松本の暴言を再現するのは、自分が泣きたくなるから絶対言わねえ。
でもな、松本。オメーが「クサそう」っつった事、俺は一生忘れねぇぞ!!
そんな俺の心の内なんて知らない松本は、キャハハと楽しそうに笑った。
「そっかぁ、そうだったんだ。でもね、告白自体は嬉しかったよ?」
「嘘付け」
嬉しかったら暴言吐くかってんだ。ケッ。
「ホントだってばぁ。でもさ、好きになってくれた理由聞くとちょっぴりガッカリしちゃうんだよね。あー、やっぱり外見かって」
「どういう意味だよ」
「あたし、結構告白されることが多いんだ」
「……はいはい」
ケッ、自慢かよ。確かにこんなに可愛いとおモテになるでしょうね。
ふて腐れたような返事をしながら松本の話を聞いていると、
「でもね、みんなあたしの外見を好きになったって、それしか言わないんだ」
と、意外にも少し寂しそうに笑うのだった。