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祭りの日の儀式
【若奥さん 官能小説】

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22年前のあの日-2

 夜11時。穏やかな天気で、暗闇の中でも雲があるようには見えない。絶好ののぞき日和だ。
 聖子は親に久美の家に泊まると言ってある。保育園の時からの付き合いで、親同士もツーカーの仲の二人は、お互いの家によく泊まることがある。親もいつものことだと思っているので、取り立てて何やかんや言われることはない。
「ねえ。本当に行くの?」
 不安げに聖子が久美に聞いた。
 聖子は、SEX自体には興味はあるものの、見つかったらどうしようと小心的な部分もある。
「心配ないよ。男が来ることはまず無いし、いざっていう時はバット持っていけば大丈夫」
 両親が共に教師で、周囲からは真面目に見られる久美だが、実は大胆で行動力も持ち合わせている。こういった場面でも、好奇心の方が勝り、何か有った時の事など気にも留めない性格だった。
「男ののぞきには天罰が下る・・・・・・か」
 種の岩伝説には付随する言い伝えもあった。子孫を残すための神聖な行為を盗み見る輩には、天罰が下るというもの。但し、これは男性に限ったことで、女性は逆に将来子宝に恵まれると言われている。
 恐らくこれは、女性の貞操を不埒な男どもから守るために後付けで付記されたのではないかと言われている。また、女性の欲情を煽り多くの子供を産ませるための戦略だったのではないかとも言われている。
 しかし、いつの世にも迷信だと相手にせず、何とか行為をのぞき見してやろうという不埒な出歯亀はいるものだが、この街に限ってはのぞきに来る男はほとんどいない。
 この街の人々が信心深いせいでもあるけれど、真偽のほどは別として、のぞき見をしたと思われる男がかかわる3件の不可思議な事件があるからなのかもしれない。

「でも本当なのかな!?あの話」
 自転車を走らせ始めても、まだ渋っている聖子が呟いた。
 種の岩伝説には、女性がのぞき見することは歓迎だが、男性が見ると天罰が下されると言われていることは町民であれば誰だって知っている。
 そんな中、本当か否か、この禁を破ったとされている男性が3人も不慮の死を遂げた話が実しやかに囁かれている。
 天罰の最初の犠牲者は、大正年代に遡る。
 ある日、女好きで有名な農家の次男坊が、ニヤついた顔で神社の階段を下りてきたのが目撃された。周囲では、のぞき見していたに違いないと噂されていた。
 男も完全に認めたわけではないが、自慢げにそれを匂わすようなことを言いふらしていたこともあり、のぞいていたことに間違いないと誰しもが思っていた。
 その5日後、この街を襲った集中豪雨により、普段の何倍にも増水した川で、その男が濁流に流され溺死する事故が起こった。当時から禁忌の言い伝えは皆が知るところであったため、『やっぱり迷信などでは無かった』と町民特に男性たちを震え上がらせた。
 その事故の記憶が薄らぎ始めていた終戦直後。ある男が、ことを営んでいる最中のカップルに危害を加え、女性を手込めにしようと凶行に及んだ。だが、屈強だった男性に返り討ちに会い、すごすごと逃げるところで神社の従者とばったり出くわした。運悪く二人の男に取り押さえられた男は、警察に突き出された。
 警察に傷害罪で逮捕された男は、1年後に当時は不治の病と言われた結核に侵され獄中で亡くなった。
 この件が、種の岩伝説の信憑性をより一層深めた。以降、禁を破ろうとする者はほとんどいなかったと思われる。
 中にはこっそりとのぞき見している輩もいたのかもしれないが、表立ってそのことを吹聴するような男はいなかった。
 『天罰が下る』これは既成事実として町民だけでなく、近隣のオカルト好きにまで広まっていった。たかが他人の性行為を見る事に命を懸ける人間などおらず、長い間禁を破る者はいなかった。少なくとも、のぞき見を自慢するような低俗な人間は一人として現れてはいなかった。
 しかし、昭和も60年に入った頃、一人の不届き者が現れる。他の街から転勤してきた工員がどこからか種の岩伝説を聞きかじり、実際にのぞき見したことを自慢げに話していたらしい。
 そんな話が街中に流れた1か月後。その工員が本社へ出張のために車で移動している最中、高速道路での多重衝突事故に巻き込まれ命を落としたのである。
『種の岩伝説恐るべし』
 この街の男たちは、その話を聞くや否や震え上がった。やはり伝説には逆らってはいけないのだと、町民それぞれが口にした。都市伝説なんかではなく、本当の伝説だと子宝信奉は女性たちの間で更なる拡がりを見せる一方、本当に天罰が下るのだと出歯亀根性のあった男性たちを震えに震えさせた。
 当然、命を賭してまでのぞき見する男はいなくなった。
 その事実は、この街の男ならば、小学生の頃からしつこいくらい聞かされているのだ。

「大丈夫よ。変な人はいないだろうし、それよりも本当にエッチしてる人たちがいるかどうか、そっちの方が怪しいわ」
 街中の誰もが知っているような伝説だ。わざわざ見てくださいと言わんばかりに、露出SEXするようなカップルが本当にいるのかどうか、そっちの方が眉唾だと久美は思っていた。
「でも、子宝に恵まれたって話はけっこう聞くよ」
 渋り気味だった聖子も、神社に近づくに従って、ちょっとは乗り気になってきたようだ。
「そうかなあ、こういう伝説って意外と後付けとか、こじつけとかも多いのよ」
 久美は、将来風習とか習わしとかを専門に調査したいと思っていた。考古学とは違う、分野で言えば民族学とでも言おうか、その方面に小さくない興味を持っていた。
 思い立っては、学校の図書館で民俗学の本を読み耽ることもあり、多少なりともその辺の知識はかじっていたのだ。
 大学へ進学し、その道の勉強をしたいとも思っている。
 とは言いつつも、もしかしたら誰かがヤッているんではないかと、純粋なスケベ根性もあってドキドキ感にも溢れていた。


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