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祭りの日の儀式
【若奥さん 官能小説】

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22年前のあの日-3

 神社の入口、境内に続く階段の下に着く。
 神社の所在を示す薄暗い電灯一つしか灯りは無いが、この日は雲一つない月夜の晩で、月明かりだけでも人を認識するには十分だった。
「行こう」
 久美が聖子を促すと、聖子も腹を括ったのか、ゆっくりと頷いた。
 長い階段を登ると、杉林に囲まれた境内は、月明かりの漏れも少なく、真っ暗闇に近い。かろうじて二人の存在が互いに確認できる程度だが、何度も遊びに来ている場所なので、その場所の位置はだいたい把握できているつもりだった。
 種の岩に続く本堂の裏の獣道のような階段に辿り着くと、胸の鼓動の高鳴りは倍速になりつつあった。
 互いに無言になり、目で会話をするようになる。
(行くよ)
(うん)
 一段一段慎重に、音が立たないようゆっくりと登る。時折枯れ木を踏み『パキっ』と乾いた音が辺りに響く。
 ごく小さい音なのだが、好奇心の中にも、わずかな罪悪感が残る二人には、とても大きな音に聞こえ、誰かが居ればばれるんではないかとビクビクした。
 感覚的にもうすぐだと久美が思った時、種の岩のある方向に人の気配を感じた。
(いる)
 久美は間違いなく人がいることを確信した。
 この場に人がいると言うことは、当然コトに及んでいるハズだ。
 キシリと枯れ枝を踏む音も、これまで以上に大きく聞こえる。その度に感付かれたのではないかとビビりながら一歩、また一歩と忍び足で階段を登る。更に近づくと、「ああぁっ」と女のすすり泣くような高い声が聞こえてきた。
 二人の鼓動はバクバクと飛び出んばかりに高鳴った。声が聞こえると、より慎重に階段を上がり、とうとう種岩を見渡せる場所に辿り着いた。
「はぁん、ああああっ」
 種の岩をのぞき見る最短位置は、距離にして約5〜6m。コトを営んでいる場所は、ちょうど月明かりに照らされ、まるでスポットライトが当てられているかのようだから、顔や姿ははっきりと見ることが出来る。
 久美と聖子は、向こうから見られないよう恐る恐るゆっくりとスローモーションのように岩の陰から顔をのぞかせた。
 まず目に入ったのは、男性の上半身だった。顔半分しか出せない状況だと、その全貌までは見えず、部分的にしか見えない。
 が、男の顔ははっきりと認識できた。
(あ!?聡ちゃん?)
 その顔は良く知った顔だった。
 消防の分署側にある農機具屋の倅、水橋聡太だ。
 聡太は学生時代にはウエイトリフティングで高校総体の上位入賞したこともあるスポーツマン。今で言う細マッチョで、やや厳つい風貌だけれどもそこがワイルドさを醸し出していて街中の若手では人気の一人だ。
 久美とは同じ班で家も近い。小学校の時には、6年生と1年生の間柄で、毎朝一緒に登校するなど色々と面倒を見てもらっていた。言ってみれば兄貴的な存在で、聡太が成人した今でも会えば立ち話をする仲だ。
 まさか、そんな身近な人間が目の前でSEXをしているなんて、これっぽっちも考えていなかった。
 聡太は、少し歯を食いしばるようにして揺れている。上半身しか見えないが、恐らく下半身は相手の女性器と結合していて、快楽を目指し腰を振っているのだろう。
 完全に集中しているのか、自分たちの存在には全く気付いていないようだった。
 聖子も聡太であることがわかったようで、口をポカンとあけ、目を丸くして驚いていた。もちろん、身体全体は硬直していて微動だにしない。
 その間中も女性の喘ぎ声は止むことも無く聞こえ続けている。その声はどんどん大きく、艶っぽくなっていく。
 カップルのうち、男が聡太であることがわかったならば、今度はその相手が誰かが気になるのは当然の事。今ののぞき方では相手まで見ることは出来ない。コトに集中している二人からしてみればのぞかれていることなんかは丸っきり頭にないし、月明かりのスポットライトはコトに及ぶその場所だけが浮かび上がるわけで、実はコトに及んでいる当事者側から見たのぞき場は、暗闇と同化していて、よーく目を凝らさなければ人間がいることを認知するのはほぼ不可能な環境になっている。
 それでものぞく側からすれば、罪悪感もあってか、向こうからでもわかってしまうと考えるのは自然なことだ。
 
 久美と聖子の二人は、どうしてもその相手が知りたい。二人は顔を見合わせて、ともに頷いた。聡太とSEXをしているのは誰か。相手の顔を見るために、思い切ってそおっと顔を出した。
 しっかりと顔を確認することが出来た。その瞬間、聡太だと分かった時以上の衝撃が、二人を襲った。
 聡太の相手も二人が良く知る人物だったのだ。
 遠藤美也子。隣の班だが、これまた幼少期から一緒に遊ぶなど、二人の姉貴分として面倒を見てくれ、久美と聖子にとって最も信頼の置ける人物の一人だ。二人とも『みゃーこちゃん』と言って、小さい頃からいつも美也子の後をくっ付いていたものだった。
 まさかあの美也子がと、二人は思った。
 ポッチャリ体形の美也子は、愛嬌はあるが決して美人の部類に入るとは言えない。その美也子が、人気者の聡太と恋仲だったとは知らなかった。
 けれど、おおらかで憎めない性格の美也子だから、聡太が心惹かれても何の不思議もない。それに小さい頃から一緒にいた間柄だから、かえってその方が自然なのかもしれない。
 が、それだけにその二人がよりによって自分たちがのぞきに来た時に限って、そこでSEXをしているとは。
 二人の関係に驚きながらも、性的好奇心が萎んでいくことは無かった。むしろ、より興味が増したと言っていいかもしれない。
 そして、いよいよ久美と聖子の二人にとって、性行為を初めて見る機会がやってきた。
 本でもビデオでもない。リアルな生の性行為が眼前に広がっていた。
 久美は、ゴクリと唾を飲み込んだ。横にいる聖子に聞こえてしまうぐらい大きな音だったように感じた。
 それだけ興奮していた。


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