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イノセント・ラブドール
【SM 官能小説】

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イノセント・ラブドール-12

私は彼が所有するラブドールとして目の前にいる男の視線と息づかいを感じとっていた。私は
彼に呪縛され、ラブドールの中に封じ込められているというのに、なぜか自由だった。私の中
の何かが解き放たれていた。


ゆっくりと覆いかぶさってくる彼の身体…。ラブドールとなった私のからだの中に何か濃厚な
ものが湧いてくる。深い肉体の奥底からゆるやかに起ちのぼってくる酩酊感。それはとても純
粋で、透明で、甘美な肉奥の囀りであり火照りだった。

互いの唇が重なり、指が触れあい、肌が交わり、脚と脚がしなやかに交わる。彼のまなざしは
冷酷な感傷を私にいだき、私を苛む純粋な欲望に恍惚として浸っていった。


じっと目を閉じるとまぶしい夏空が見えた。それは高校生だったとき見た懐かしい空だった。

どこからか聞こえてくる絶えまない彼の息づかいとともに彼の唇や指が私のあらゆる部分に優
しく触れ、撫であげ、閉ざされた私の窪みをゆるやかに開こうとしていた。

私を包む光…それは彼が私にいだく感傷であり、感傷はゆっくりと薔薇色に染まり、まぶしく
映え、まどろんでいく。


彼の屹立したものの先端が繊毛を掻き分け柔らかな秘丘に触れる。肉襞がゆるりとすべり喘ぐ。
甘美な弛緩とともに肉奥に微熱がじわりと湧きたつ。腿のあいだにふわりとした風を感じる。

くびれた私の腰を強くつかんだ彼は私の脚のあいだに下半身を深く沈め、屹立したもので割れ
目の隘路を淫蕩にこじあけ、陰唇の中に彼のものをめり込ませ、掻きまわし、柔らかい粘膜を
捏ねていく。


すでに私の魂は彼によってラブドールの身体から吸い取られていた。私の中に楔のように打ち
こまれた彼のものはさらに堅さを増し、私の肉襞は海綿のように彼のものに纏わりつき、ふた
りの肉と肉が噛み合うように溶けていった。

彼のものの生あたたかい体温は私の肉芯に無垢な光を湛え、漲り、伸びあがり、私の奥で戯れ
た。潤みを増した襞の奥は、まるで自分のものではないように烈しい収斂と弛緩を繰り返し、
私はラブドールとしてこれまで経験したことのない高みに達したのだった…。


………


エピローグ…

 
あれから三年がたつ…。

私のマンションから見わたす街は仄かな黎明に包まれ、朝の光を微かに孕んだ空からは彼と
雨宿りをしたときに見た薄紫色の雨が降り続いている。

私はあのとき大樹の下で気を失って倒れていたところを警察に保護され、病院に運ばれた。
命に別状はなかったもののそのときの記憶は定かでなかった。結局、あの場所に彼が現れたの
かどうかも定かでない。そしてその後、彼から電話がかかってくることもなかった。


私はこの三年のあいだにまるで何か厚い眠りのような呪縛から少しずつ解かれていくような気
がしていた。それは濃密で麻痺的な微睡みから覚めていくと同時に、甘美で無垢な私自身を失
っていく喪失の過程でもあった。


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