ガリガル!!-6
「ちょっと!!あんた昨日イケメンと歩いてたってホント!?」
愛子が教室に入るとすぐにやって来ました。
「塚川からの目撃情報だよっ」
由芽が柚子をゆっくりと皆の輪の中へ誘導していきます。
「本当…」
沸き上がる奇声。だからなんでいちいち反応するのでしょうか?
「でも…迷子助けるの手伝ってただけだよ?」
奇声が納まりました。
葉月が足を組みながら
「じゃあ、その人に恋したり、気になってるわけじゃないの?」
と、怖い顔で柚子に聞きました。
「うんっ、全然」
その瞬間「え〜…」という声。そして、たくさんのショゲた顔が柚子を囲んでいます。
「何、その顔はっ!?」
「皆して柚子が元気ないから心配してたんだよ」
愛子が言いました。
「そしたら、イケメンと歩いてたって…気になる人が出来たのかと思ってたのに、違うって言うんだもん…」
由芽が「ねっ」と男子たちに言いました。
「柚子、やっぱり元気なかったから…恋でもして元気になって欲しいって皆思ってるんだよ」
葉月が柚子の頭をポンと叩きました。
「おまえが元気ねぇとさぁ〜つまんねぇじゃん?」
…塚川。
「やっぱ大事なダチには幸せになってほしいだろ」
…アキラ。
「女だとは思えないけどさぁ…だから、お前は他の女と違ってかなり友情感じてんだぜ?」
…リョッチ。
「早く元気な柚子に戻れよな。で、また皆で馬鹿しようぜ!!」
…ジョージ。
「みんな柚子が大好きなんだよ!」
愛子が優しく笑ってくれました。
ここ数日で柚子の涙腺は緩くなっていたようです。
「…フッ…っく…柚子も…みんな大好ぎぃぃ〜っ」
「ギャッハハ泣いてるぅ!!」
「鼻水垂れてるよぉ、馬鹿だぁ!」
「女じゃねぇ!!けど女だぁー!!」
「うえ〜んっ!うっせぇ〜…!」
顔なんて関係ありません。鼻水なんて気にしません。柚子は、みんなの温かさが大大大好きです!
一日の終わりを告げるチャイムが鳴りました。柚子は、本当は千晴が気になっていることや、彼女がいるから諦めることを皆に話しました。皆は残念がっていたけど、柚子が悩んで出した事だから何も言わない、と言ってくれました。
今日は、久しぶりに四人で下校です。四人で笑いながら校門をくぐると
「柚子ちゃん!!」
聞き覚えのある声が柚子の名前を叫びました。まさかと思って振り替えると、そのまさかでした。
「…千晴」
「柚子ちゃん…オレ、ずっと待って」
柚子は千晴の言葉を最後まで聞かずに走りだしました。こう見えて、柚子は元陸上部。足は早いのです。が、千晴も負けじと柚子の後を追ってきます。
「待ってぇー、柚子ちゃーんっ」
しつこい奴です。
「柚子はねぇ、もう千晴に会わないって決めたのっ!!会うともっと好きになっちゃうからっ!!千晴には彼女がいるんでしょっ!?だから柚子は諦めるって決めたのっ!!」
柚子は後ろを向いて千晴に言い放ちました。
そして前を向いた時、目の前が真っ暗になりました。
―ドン。
人にぶつかったということはすぐにわかりました。
「ご、ごめんな…」
「いってぇ〜…柚子じゃん、何やってんの?」
「栄介…」
柚子はその場に立ち尽くしてしまいました。柚子がぶつかった相手は栄介だったのです。Α介=エイスケ=栄介、うまいでしょ?いやいや、そんなことしてる場合じゃないのです。
「柚子ちゃん…めっちゃ足早い…」
ホラ、追い付かれてしまいました。
「わっ、柚子彼氏できたの?信じらんない!!」
柚子はたくさん言いたいことがあるのに…声が出てきません。