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ガリガル!!
【コメディ 恋愛小説】

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ガリガル!!-7

「栄介、誰?この女の子…」
女の子の声が聞こえました。栄介の影に隠れて見えなかったようです。おそらくこの子が例の彼女でしょう。小さくて、髪が長く少し巻いているようです。肌の色が白くて瞳の大きい、可愛い女の子でした。
「ん?女の子じゃないよ、この子は。女捨ててるから。コイツ、俺の元カノで俺に未練タラタラみたい」
勝手なこと言わないでよ。柚子は女だよ。柚子はあんたなんかとっくの昔に忘れてんだよ。だけど頭が混乱して、何から言えばいいのかわかりません。
「彼氏もさっ、知り合ったばっかなら気を付けなよ。コイツ本当女らしくないから!!」
「千晴は…彼氏…じゃ…な…い…」
最後はほとんど聞き取れなかったと思います。さっきも言いましたよね?涙腺が緩くなっているのです。堪えているにもかかわらず、涙は容赦なく流れていきます。
「知ってるよ」
千晴が急に柚子の肩を抱き寄せました。
「柚子ちゃんが女の子らしくないことくらい知ってる!!だけど、オレは柚子ちゃんの良いとこいっぱい知ってんだ!柚子ちゃんは泣き虫で、優しくて、強くて、正直で、吐くまで飲む!!」
一瞬、ホントに一瞬だけ涙が止まりました。
「柚子ちゃんは、確かに女の子らしくない。だけど、女の子なんだ!!普通の女の子には出来ないようなことも出来ちゃう、強くて格好いい女の子だ!!空は柚子ちゃんがいたから笑うことが出来たんだ」
空の名前が出てきて気付きました。千晴は、栄介に説教すると同時に柚子にも語りかけてくれていたのです。千晴を見上げると目が合いました。千晴は柚子に微笑みかけてくれました。
「だから、柚子ちゃんは最高最強のガリガルだ!!そんでもって、オレはそんな柚子ちゃんが好きなんだ!!ちなみに、彼女がいるなんて嘘だ!!わかったかっ!!」
「ガ…ガリガル?」
栄介は、いきなりキレ出した千晴に驚いているようでした。
「お前みたいに柚子ちゃんの良いとこ見つけられない奴には一生わかんねぇよ!」
千晴は「行こう」と、柚子の肩を抱いたまま引き替えそうとしました。
「ダメだ…待ってて…」
柚子は栄介の腕から抜け出しました。まだ、柚子は言いたいこと言ってません。
「栄介…柚子、栄介なんかこれっぽっちも引き摺ってないから!」
「それに、お嬢さん!!二股掛けられないように気を付けな!!」
そうタンカを切ると、柚子は、ニコニコして両手を広げている千晴の胸の中へ飛び込みました。そして、唖然としている二人の前を胸を張って通り過ぎてやりました。
その帰り道、柚子と千晴は人のいない小道を何も言わず歩いていました。もちろん一定の距離を空けています。さっきの行動が嘘みたいです。
沈黙を破ったのは柚子です。
「聞きたいこと…いっぱいあるんだけど」
「んー?何?」
柚子たちは取り合えず立ち止まりました。
「なんで昨日、柚子に声かけたの?」
「道端で吐くなんて、超おもしろそうな奴だと思ったから」
千晴はあっけらかんと答えます。
「何で空のママ探し手伝おうと思ったの?」
「困っている人がいたら助けようと思ったから…ま、これは誰かの受け売りだけど。それに、普通の人だったら誰かがやるだろうとか思って手を差し伸べないのに、柚子ちゃんは当たり前のように空に声をかけた。オレはそれをかっこいいと思ったから」
「何で彼女いるって嘘付いたの?」
「そう言わないと、柚子ちゃんが安心しないんじゃないかと思って。彼女のいない男が今にも折れちゃいそうな女についていったら、何されるかわかんないでしょ?自分の理性を保つためにも言ったかも」
あの時、走って帰って良かったと心からそう思いました。
「好きって…そう言ったよね?あれは本当…?」
「うん、本当。なぜならば、柚子ちゃんはオレが今まで見たことない女の子だから。さっきも言ったけど、優しくて、強くて、格好いい。だけど、柚子ちゃんはそこが自分のコンプレックスだと思ってたじゃん。そんなん勿体ないよ?迷子を助けるなんて、今までのオレが知ってる女の子たちならしなかった。だけど、柚子ちゃんはすぐに話し掛けてた。優しくて、心の広い子だと思った。そう思ったら、飾らない等身大の素直な柚子ちゃんを好きになってた!」
「…そうなんだ」
千晴は柚子のことをしっかりと見ていてくれました。柚子の全部を知っていて、それでいて好きだと言ってくれました。


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