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〈不治の病〉
【鬼畜 官能小説】

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〈不治の病〜治療用献体・笹木希〉-1





『き、君達は…いったい何て事をしてくれたんだ!』


院長室に取り乱した声が響く。
不敵な態度をとる患者達は狼狽える院長の言葉にも反応をみせず、天井を仰いだり外の景色を眺めたりしている。


『パトカーは走り回る。ニュースでも取り上げられる。なんで一般市民の女に手を……』

『そりゃあ“大先生”が新しいナースをさっさと寄越さないからでしょう?お客さんは待ってくれないんだからさあ』


院長が言っているのは亀田絵莉の事だった。
突然の失踪に警察は動き、マスコミもその事件を報道した。
その騒ぎを見ていれば院長の狼狽えは尤もであるし、患者達の落ち着きのほうがむしろ不思議である。


『落ち着いてくださいよ大先生。今まで俺達が何人の女を拉致ってきたと思ってるんです?こんなクソ田舎の警戒心もないバカ女の一匹くらい、証拠も残さず拉致れますから』


確かに手掛かりは何も残ってはいないようだ。
第三者の指紋も衣服の繊維も現場にはなく、おまけに目撃者も皆無。
事件から一ヶ月が経ち、単なる家出じゃないか。という声も出始めていた。


『その『大先生』はやめろ!と、とにかくもう危ない橋は渡りたくない。ボイラー室を元に戻してくれ』

『ボイラー室を?それは無理だな、大先生』


院長は今更ながら患者達が怖くなっていた。

人妻の次は女子高生か……それとも……?

その毒牙を院外にまで伸ばすのに戸惑わない行動力に、身の破滅を予感したからだ。


『ボイラー室は俺達の物だ。もし手放せってんなら技師を全員帰してやるぜ?』

『!!!』


病室内の保温や非常用電源を担うボイラー室……そこに必要不可欠な技師が居なくなるとなったら、それは病院の生命線を絶たれるに等しい……何故ボイラー室だったのかに気付いた院長は、見る間に青ざめて直立のまま固まった……。


『こっそり募集を掛けても無駄ですよ。そっちにも俺達の仲間が入ってる。変な真似したら直ぐに……』

『き…君は……ッ』


金と名誉に目が眩んだ己の浅はかさを悔いても、もはや手遅れ……ボイラー室というエネルギー供給源を明け渡したのは、正に悪手の極みだったのだ……。


『そんなに狼狽える必要はないと思うがなあ?なあに、今まで通りの関係でいれば何も問題はないんだ。ところで大先生は忙しくてナースを選ぶ時間もなさそうだから、こちらで選んでおきましたよ。この女をこの病院に呼んでもらいたい』


患者は一枚の写真を取り出すと、院長に突き付けた。
その写真には色白でスレンダーな女性が写っていた。



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