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〈不治の病〉
【鬼畜 官能小説】

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〈不治の病・其の三〉-35

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『絵莉、ただいま』


陽は傾きはじめ、辺りは夕暮れに包まれていた。

純一は、いつものようにチャイムを鳴らし、玄関のドアが開けられるのを待っていた。
……が、いつまで経ってもドアは開かず、家の中は静まり返ったままだ。


(……おかしいな?)


純一が玄関のドアを引くと、すんなりとドアは開いた。
中は夕暮れ以上に暗く、明かりが点いている様子はない。


(ははぁ……俺の誕生日だから、驚かそうとしてるんだな?)


純一は静かに靴を脱ぎ、逆に驚かそうと思い、抜き足で家へと上がり、ゆっくりと居間のドアを開けた。


『……絵莉…?』


テーブルの上には、朝に置いた読みかけの新聞がそのままで、台所にも人がいる気配はない……突如として純一に不安がよぎり、階段の明かりを点けて二階まで駆け上がった。


『絵莉?絵莉…?もういいから出てこいよ?』


しんと静まり返る部屋……自分の鼓動の音だけがやたらと響き、その鼓動は速さを増していった……額や脇には汗が吹き出し、呼吸も落ち着かなく荒くなっていく……。


(そ、そうだ。買い物にいって鍵を掛けるの忘れたんだ……)


純一は自分を落ち着かせるような理由を思い浮かべ、ポケットから携帯電話を取り出してかけた……いつも携帯電話を肌身離さず持っている絵莉の事だ……これで連絡がつく……。


『!!!』


誰も居ない台所から、絵莉の着信メロディーが聴こえてきた……純一の顔は蒼白となり、縺れるような足取りで階段を駆け降り、台所まで駆けた……。


『……え……絵莉?どこだ?……絵莉……?………』


カーポートに絵莉の車が停まっていた事を思いだし、純一の目の前は真っ暗になっていた。
純一の狼狽えた声は、言い知れぬ恐怖に震え、それは暗闇へと変わっていく玄関の空間で消えた……それは二人のこれからの人生そのものの漆黒だった……。




《終》


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