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〈不治の病〉
【鬼畜 官能小説】

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〈不治の病〜治療用献体・笹木希〉-4

『あんな野次馬根性の塊、無視しても平気だから』


貴女が言わないでよ!……と言いたくなったのをぐっと堪え、希は婦長の後をついていく。

この病院にいるスタッフは人間的に何処か可笑しい……そう感じながらも口には出せなかった希は、何故か入院患者のいる部屋へと案内された。

そこは520B号室。

病室とは名ばかりの監禁・凌辱部屋だ……。



「今日から配属になった笹木です。宜しくお願いします」


なぜ入院患者に挨拶をしなければならないのか、その理由が分からない。
しかも患者達は至って健康そうであり、だらしなくベッドに寝そべってはジロジロと見てくるのだ。


『あれ?君の顔、見たことあるなあ……そうだ、リアル白衣の天使だ……』


白髪混じりの50代くらいのオヤジは、横目のまま舐めるように希を見てくる。
そのイヤラしさに満ちた眼差しに希は悪寒を感じたが、なに食わぬ素振りで無視を決め込む。


『ネットで話題になったのって5年くらい前だっけ?』

「あ…はい……それくらい前…かな?」

『じゃあもう20代も後半かあ。けっこう“いい年”だよね?』

『なに言ってんだよ。こんな綺麗な女が彼女なら人生勝ち組だぜ?』


同僚ナースも可笑しければ、患者達も負けずに可笑しい……希は早くも病院を変えた事を後悔し始めていた。


『あ、これはどうも』


気分が鬱ぎ始めていた希の後ろから、一人の男が現れた。
白衣を纏う40代くらいの男は、先だって転勤してきた医師だった。


「あ、失礼しました。今日入りました笹木です。宜しくお願いします」

『君が笹木さん?私は工藤と言います。整形外科医をやっております。宜しく』


工藤という医師は社交辞令の笑みすら作らず、軽い挨拶だけでそのまま病室には入らずに、廊下を歩いていってしまった。

何とも不自然で冷たい対応に、ますます希の気持ちは鬱いでいく。


『あの先生、美容整形も出来るって。ま、あんたの顔なら弄るトコなさそうだけど』

「ッ!?」


無表情な嫌みに、希は絶句してしまった。
明らかに棘を含んだ言い回しであったし、そこには希に対する配慮も感じられなかったからだ。


(……最低…ッ)


結婚後の退職を話した時に、院長は一年間の育児休暇とその後の復職を約束し、夫と子供の家族手当てまで付けると提案した。
もちろん給料も個人病院のとは比べ物にならないくらい高給で、これを断るという選択肢は希の中には有り得なかった。

まだこの病院に入って一時間も経っていない。
なのに希はうんざりとした気持ちだけになり、恥を忍んで元の個人病院に戻ろうか……と、真剣に思うまでになっていた。



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