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〈不治の病〉
【鬼畜 官能小説】

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〈不治の病〜治療用献体・笹木希〉-3

『今日から一緒に働く新人さんだよ。挨拶して』

「今日から配属になる笹木希です。前の病院でも整形外科を担当してました。宜しくお願いします」


あの仏頂面の婦長の隣に、同じ女性とは思えないくらい美しいナースが立っている。

整えられた眉、パッチリ二重瞼の瞳、緩やかなラインを描く鼻、薄いながらもポッテリとした唇、白衣のような真っ白な肌はきめ細かく、栗毛色の長い髪はキッチリと後頭部に纏められている。

目尻に年相応の皺が走るも、その類い稀なる美貌は素晴らしいの一言であり、この美人ナースの為に遥々遠方から入院しにくるのも頷けよう。


『笹木さんて結婚してるの?』


今日から同僚となる中年のナースが、不自然な笑みを浮かべながら質問をしてきた。
こんなプライベートな事を初見で聞かれるのは不愉快だったが、まだ新人の希に拒否は選べなかった。


「あの……まだ未婚です」


無理やり笑った顔は苦笑いのそれで、明らかに見劣りする同僚ナース達からすれば、それこそ不愉快だろう。


『笹木さんは婚約者がいるんだよ。来年の夏には結婚するんだから』

(ちょ…ッ!?な、なんなのこの人…?)





この市立病院の院長に誘われた時、希は婚約者が居る事と、来年の夏に結婚した後には個人病院も辞めると話して、その申し出を一度は断っていた。
看護師という仕事に誇りを持ってはいたのだが、やはり子供が欲しかったし、そうなれば看護師として働くのは難しいと考えていたからだ。

そのプライベートな事を婦長は勝手に喋り、しかも悪びれもせずに平然としている。
それは如何に上司であっても失礼に過ぎる言動であるし、希は憤慨を隠せずに憮然としていた。


『婚約者?なんて呼びあってるの?』

『そういう話、わたし大好きなの。教えて教えて!』


根掘り葉掘りと不躾な質問を繰り出すナースにも、希は辟易とした。
まるで芸能人のプライベートを覗こうとする下品な輩と同類に思えたからだ。


(あ〜もう!とっとと答えて仕事始めちゃお)


不機嫌と諦めを混ぜこんだ感情のままに、希は質問に対する答えを口にした。


「ハハハ……のんちゃんと健二さん…です」

『質問はそれくらいよ。さあ笹木さん、病室を回るわよ』


婚約者との間にある気恥ずかしい秘密を話すや、婦長は希の手をとってナースステーションから連れ出した。



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