〈不治の病〜治療用献体・笹木希〉-15
『……ああ、そうだ。そろそろ痛みが出てくるだろうから、鎮痛剤の座薬を挿してあげましょう……』
「!!??」
希はギョッと目を見開き、息を詰まらせた……畜人が触れた其所が肛門だったからだ……まさかそんな所にまで興味を示すとは思いもしなかったが、このオヤジ達の異常性を考えたなら不思議ではない……。
『糞が詰まった穴に挿しても効果は薄いんじゃない?だったら綺麗にしてからじゃないと……ヒヒヒ!』
「ぶ…ごぉ…ッ!?」
長いチューブをぶら下げた丸底のガラス容器を見た希は、絵に描いたような狼狽えをみせて声を震わせた。その器具は自分の腕に射されている点滴と同じだと直感したからだ。
『お〜…さすがナースだ、察しがいいねえ。カテーテルの使い方は分かってるもん……ねえ?』
「む"―――――ッ!」
畜人の唾に塗れたカテーテルはツプンと肛門に滑り込み、それは希の足掻きに一瞥もくれなかった。
今や希の直腸は外気に通じており、それはつまり肛門は〈門〉としての役割を果たせないという事だ。
(い…やだッ!健二さん…!助けにきて……ッ!)
長距離トラックの運転手をしている健二が、このタイミングでこの場に現れる可能性はゼロだろう。
今頃は未来の花嫁の危機すら知らぬまま、目的地である博多に向かっているはず……。
『ヒヒヒヒ〜…“のんちゃん”はナースであり、私達の欲望を叶えてくれるペットでもあるんだ……性欲処理の愛玩動物になるのんちゃんに、浣腸するならやっぱり御主人様の小便ですよねえ?』
「ッ…!!???」
のんちゃん。というニックネームで呼ばれているのを知っているのは同僚のナースだけだ。
やはりこの病院のスタッフ全員が自分を陥れたのだと確信を抱くと同時に、未だに見つかっていないあの人妻を考えれば、きっと自分も此所からは出られない。
いや、既にこの病院の中にはおらず、何処か別の場所に運ばれて……?
(けッ…健二さん助けて!私は此所にッ…こ、此所に居るのッ!)
勃起した肉棒を無理矢理に下げて、畜人は容器に放尿している……ブクブクと泡立つ液体は汚物のそれであり、早くも重力に引かれて希の直腸に流れ始めていた……。
『もしかしてフィアンセに助けを求めてる…とか?そうですよね……変態オヤジの小便を浣腸されるなんて、婚約者として失格ですものねえ?』
「ぷふッ!?ぶお〜〜〜〜〜ッ!」
畜人が容器を掲げると、その内容液は引力に従うままに直腸に流れ込んだ。
その汚水は腸壁を攻撃してピリピリとした刺激を生ませ、グリセリンとは違う異質な腹痛を催させた。
「ぐ…んぐ!むうッ!?ふ…んぐぐ!」
凛々しかった瞳は強烈な嫌悪に軋み、整えられていた眉毛もミミズのようにグニャグニャと曲がる。
既にボールギャグによって美顔は壊されていたが、希は感情の赴くままに、自らの美貌を完全に破壊してしまっていた。