第12話 淫猥な温泉街-4
強い日差しに照らされた、かやぶき屋根の建物が、2人の視線の先にはあった。三角の面をこちらに向けて、伝統的な趣《おもむき》のある建物が眼前に佇んでいるが、何もエロティックなものなど、見当たらない。
「由真、凄い。」
ため息交じりに、瑞樹が言った。
「由真ちゃん、綺麗ね。可愛いね。」
早苗も、うっとりとした調子で呟いた。
佳代子は、訳が分からない。どこに由真がいるのか。2人の視線の先にあるのは、かやぶき屋根の建物の、三角の形の壁面だけなのだ。
だが、強い日差しの為に濃い影になった三角の頂点辺りを、ずっと見ていると、だんだん影の暗さに目が慣れて行き、そこに窓がある事が分かって来た。更にずっと見ていると、窓の中に人のシルエットのようなものが見えた。強い日差しが生む、明暗の余りの激しさの為に、相当長い時間をかけて見つめていないと分からないのだが、建物に窓があって、その窓の中に人がいるのだ。
そして、1分近く見続けて、佳代子はようやくわかった。窓の中には、全裸の由真がいるのだった。全裸のカラダを、温泉街の景色に向かって、これでもかと解き放っているのだ。
「あれ、由真ちゃんなのね。由真ちゃんが裸で、窓の傍に立っているのね。」
佳代子は言った。
「そうだよ、佳代子ちゃん。ほら、見てごらん。」
早苗は、カメラのモニターを佳代子に見せた。カメラは望遠になっており、露光も上手く調節されていたから、由真の様子が肉眼より良く見えた。その顔は、明らかに快感に陥れられているものだった。口の動きからも、かなりの声を上げて喘いでいるのが分かる。
窓は高い位置にあるので、上空を吹く風にかき消されて、彼女達の所にまでは届かないが、由真は、あの窓から、裸体と喘ぎ声を、温泉街とそこを歩く何百の通行人達に向かって、解き放っている。
誰かに、気付かれてはいないのかと、佳代子は心配して周囲を見た。何人かが、由真のいる方角に視線やカメラを向けていて、一瞬どきりとした佳代子だったが、それが全部、彼女のクラスメイトだと分かった。
クラスメイトの中でも、既に涌井達に処女を奪われている少女達が、由真の痴態を見上げているのだが、佳代子にはそこまでは分からない。だが、クラスメイト以外の観光客は、誰一人そちらに視線を送っていない事は分かり、少し安心する。
強い日差しによる明暗の為に、少し見たくらいでは全く分からないので、一般の観光客は気付いていないのだ。クラスメイト達がカメラや視線を向けているので、そこからバレてしまいそうな気もしたが、観光地で伝統的な趣のある建物を眺めたり撮影している人間も、決して珍しくは無く、観光客達は、そんな事にいちいち構うつもりはない様だ。
もちろん、クラスメイト達以外にも、由真が淫行に至っている建物を観察したり撮影する観光客はいるが、短時間そちらを見ただけでは、あの濃い影の中の痴態には、気付く事は無いらしい。カメラにも、なかなか映らない。相当望遠にして、マニュアルで露光調整をしなければ、由真の痴態は映っては来ない。そこで由真が淫行に至っている事を知っている者にしか、その様は目撃することも、撮影する事も、出来ないのだった。
だが、誰も気付かないが、誰も撮影できないが、由真の裸体は、温泉街全体に向かって曝されている。由真の喘ぎ声も、温泉街全体に向けて発せられている。日向《ひなた》にいる者には日陰にいるものは見づらくても、日陰にいる者には日向にいる者は、はっきりと見えるものだ。
由真には見えているだろう。温泉街の景色がはっきりと。そしてそこに、全く遮蔽される事の無い自分の全裸が曝されているのだ。由真の心中に吹き荒れる羞恥の念のすさまじさを、佳代子は想像した。想像するだけで興奮した。
佳代子は、由真の羞恥の念を創造するだけで、早苗と瑞樹の隣で、また、絶頂しそうになって来た。だが、今は早苗と瑞樹が隣にいて、1人ではない。
「早苗ちゃん、瑞樹ちゃん、私、イッちゃいそうなの・・」
そう言うと、早苗と瑞樹は、佳代子を挟むように抱きしめて来た。2人の腕の中で、佳代子は絶頂した。同じく往来のど真ん中で、衆目に曝されての絶頂だが、クラスメイトに抱きしめられていると、1人で絶頂するより、ずっと、安心感があった。
美紀子も、由真の痴態をおかずに絶頂していた。ベンチで座って電マを股間に押し当てている時に、亜由香に声を掛けられた美紀子は、由真の居場所を教えられ、由真の痴態を目撃したのだ。
見えるようになるまでは、明暗に目が慣れるまでには、時間がかかり、その間だけは電マもOFFになっていたが、目が慣れ、由真が見えて来ると、また、電マはONになった。由真の痴態が、美紀子のオナニーを再開させたのだ。
そして、また絶頂を繰り返すことになった美紀子だが、今は亜由香の腕の中だった。同じく多くの通行人の目に曝されながら絶頂を繰り返す状況でも、クラスメイトの腕の中の方が、より快感を堪能できる。そう思う美紀子だった。