第11話 雑踏の痴態-8
なおも激しく乳房は揉まれ、揺らされる。2分後、ヴァギナへの愛撫無しで、2回目の絶頂もやって来た。乳房は刺激され続けている。快感と興奮と記憶と妄想が、連鎖反応的な爆発を繰り返す。
と、突如乳房は解放された。Aはスタスタと、店の奥の方に向かって歩き出した。
(そんなぁ・・)
佳代子の中に、喪失感が、寂寥感《せきりょうかん》が、溢れて来た。もっと欲しいのに。まだまだ乳房を刺激されたいのに。Aの背中を見送りながら、そんな想いの急激な堆積は、彼女に快感の記憶を呼び覚まさせた。つい先まで与えられた乳房への刺激を思い出した。乳房を揉まれる感覚を、妄想した。思い出すだけで、快感が乳房からヴァギナから、一挙に駆けあがって来る錯覚に陥った。
1人でアクセサリーコーナーに佇んでいる状態の佳代子は、誰にも、どこにも触れられてもいないのに、全身を駆け巡る快感に悶えていた。1人で腰をスィングさせ、背中をのけ反らせ、天井を見つめながら、荒い呼吸の中に喘ぎ声を紛れさせた。
そして、佳代子は絶頂した。すぐ隣で、見知らぬ観光客がアクセサリーを物色している。背後をすり抜けていく人の気配と足音を感じる。彼等の誰一人、土産物店の一角に佇む女子高生が、1人で、誰にも触れられること無く絶頂に至っているなど、想像もしていない事だろう。
Aの遠く離れてしまった背中を見つめながら、佳代子には、何故か満足感があった。絶頂の余韻を愉しみながら、全く愛撫されないままでの絶頂を味わえたことに、殊の外、幸福感を見い出していたのだった。
その佳代子の尻に、また誰かの手が触れた。また、男の手だ。もう佳代子は、自分が何をされるか、どういう風になってしまうか、十分に予測出来た。そしてその予測通り、佳代子はまた、乳房を揉まれただけで、何度もの絶頂を堪能させられることになった。
佳代子の乳房を揉み、絶頂に至らしめたのは、辰己だった。午前中に、Eに処女を奪われたばかりの奈南と、Fによって処女喪失したばかりの佳子を犯した辰己だったが、午後には処女ヴァギナにペニスを刺し込む快楽を、存分に味わう所存だった。
辰己も、何回か絶頂させた後、佳代子のもとを離れて行き、その1分後、佳代子は、愛撫無しでの絶頂を、再び味わう事になった。絶頂の只中で、傍《かたわ》らをすり抜けていく老婦人と目が合った。興味なさげに、老婦人は通り過ぎて行ったのだったが、佳代子の中には、絶大な羞恥心が湧き上がっていて、それがまた、興奮と快感を高めた。
羞恥心がもたらす興奮のみで、佳代子は、愛撫無しの状態で、2回目の絶頂すら迎えてしまったのだった。
また、佳代子の尻が触られた。Aが去り、辰己が去って、それでもまだ、佳代子に痴漢を仕掛ける者があったのだ。その痴漢による乳房への愛撫でも、佳代子は絶頂させられた。指を乳房に埋没させられ、上下左右に練り上げられ、底なしの快感に引きずり込まれた。その快感がヴァギナへの刺激を思い出させ、ヴァギナを弄られている場面を妄想させ、佳代子は絶頂したのだ。直接ヴァギナを刺激される事も無く。
佳代子を絶頂させたのは、涌井だった。涌井も、ひとしきり胸を揉みしだいた後は、佳代子を残して歩き去った。涌井が立ち去った1分後、佳代子はまた、愛撫無しでの絶頂を迎えた。他のクラスの、名前も知らない生徒達に囲まれ、彼女達のかしましいお喋りの声に周囲を満たされながら、佳代子は一人で佇みつつ、絶頂したのだった。
腰をくねらせて悶える佳代子に、おしゃべりに夢中の女子高生達は気付きもしない。同じ体操服姿の佳代子が、1人で絶頂を堪能しているなんて、思いつきもしない様子で、ぺちゃくちゃと会話に夢中だ。ふざけ合い、軽く小突き合ったりもしている。
そんな他のクラスの生徒の1人が、別の生徒に小突かれて、バランスを崩す。その拍子に、その生徒の尻が佳代子の尻に当たった。
「あ、御免なさい。もう、あんたが押すから・・」
その女生徒は、ひと言、佳代子に謝罪の声を掛けた後は、直ぐに友人達との会話に意識を戻してしまった。誰も佳代子に意識を留める事は無かった。だが、尻が触れ合った刺激だけで、佳代子はまた、絶頂していたのだった。
愛撫無しで、また絶頂してしまった。そんな羞恥のような背徳のような思いの中で、絶頂の余韻に浸っている矢先に、同じ学校だが違うクラスの、見知らぬ女生徒に、尻で尻を刺激されたのだ。今の佳代子には、十分に強烈な愛撫だったのだ。
自分が愛撫をして絶頂させたなんて事には、全く気付かずに立ち去って行く女生徒の背中を、佳代子は快感の余韻を堪能しながら、見送ったのだった。
また時間は遡《さかのぼ》り、ヴァギナに軟膏薬のようなものを、里香によって塗り付けられた由真が、絶頂に悶えている場面となる。スースーとした、かゆみ止めを塗った時のような感覚を股間に覚える由真は、一歩足を踏み出した刺激だけで、近くに見ず知らずの観光客がいるにも関わらず、一人で民芸品コーナーに立ち尽くしながら、絶頂を迎えたのだった。
そこへ、佳代子への痴漢行為を終えたばかりのAがやって来ていた。そのAの背中を見送りながら、佳代子は1人で、愛撫をされる事も無い絶頂に至っている。
由真が一歩踏み出した快感で絶頂したのと、佳代子が記憶と妄想だけで絶頂に至ったのが、ほぼ同時だったのだ。弥生のクラスに所属する女子高生2人が、土産物店のアクセサリーコーナーと民芸品コーナーで、同時に、一人佇みながらの絶頂に至っている時に、Aは佳代子のもとから由真のもとへと移動していたのだ。