プロローグ-1
「強制はしない。よく考えて詩織が決めるんだ。」
暗い部屋に柔らかな声が響く。
よく考えろ、と彼は言ったけれど、もう考えることなど無かった。
ただ、素直な気持ちを受け入れ、それを言葉にするだけで良かったのだから。
「お願いします。」
彼の人差し指が、私の頬をやさしく伝う。
「お願いします。入れてください。」
彼は、私の中に入っていたピンクローターをゆっくり引き抜くと、
まとわりつく滑りに舌を這わせた。
「いい子だね、詩織。」
8月7日。東京。
朝から降り続いていた雨が急に激しくなった頃、私は、彼の物になった。