碧の聖夜-2
「あー、坊や。どうしたのかな?もう礼拝は終わってるんだが」
「んー。ボク、お祈りしに来たの」
「そりゃいい心がけだ。今日は主なるイエスの生まれた日。神はなんでも聞いてくださる」
「ボク、欲しいものがあるんだ。だから、神様にお願いするの」
「いいとも、いいとも。イエスは『求めなさい』と山の上に昇った折りにおっしゃっている」
「じゃ、いいのかな………」
少年の微笑みは牧師の闇の心を震わせた。
その笑みは最初のあどけない無垢な印象からは考えられないほど、その……淫らだったからだ。
「坊や、名前は何というの?」
「……アオ。難しい漢字だよ?」
「ふむ。『紺碧』の『碧』か。そりゃ良い名前だ。実に……いい」
その愛くるしい姿からは、形容しがたい色香が漂っていた。経験したことのない渇望が牧師を襲い、額に脂汗が浮かぶ。
牧師としての威厳や理性、平常心が徐々に蒸発して行く。
私にだって、欲しい物はある。
「その……毛皮の下はなにかな?良い物を隠してはいないかね?…ここは神の家だ。臆することはない。恥ずかしがる事こそ、人の第一の原罪だからね」
「碧」と名乗った少年は瞳を輝かせてそのあどけない桜色の唇を開く。覗いた歯は真珠そのもの。
「牧師センセ、ボクの欲しいもの、わかるんだ。すっごーーーーいっ」
「君の欲しいものはここにあるよ……君がとっても欲しかったものがね」
「うんっ。ボクもそう思っていたの」
「君の欲しい物は……そう、熱い。何もかも溶かしてしまう程に」
「うんっ。そうそうっ。あっついのが好きっ」
「そして硬くて、長く、太い、逞しいものだ」
「えっと。大正解ですっ。大っきいほど、嬉しいの」
「じゃ、プレゼントを欲しがる君の姿を見せておくれ」
牧師の言葉に眼を伏せ、恥じらう姿は思わず抱きしめたくなる程に愛らしい。
静寂に包まれた礼拝堂に、心臓の鼓動と唾を飲み干す音が静かに昂まっていく。
牧師は悪魔のように裂けた口を歪ませ、嗤う。
目前の獲物に身体の一部分に血が集まって行く。
「そう……恥ずかしがっちゃ、だめなんだよね」
「その毛皮の下に、可愛らしくてすっごく硬くなったものが張り付いてないかな?」
「ん───────、あ、た、りっ、かもっ」
碧は手元に目を落とすと、毛皮のコートのボタンをもどかしく弄ると、それを外した。
そして上目遣いで牧師を見上げてから、視線を逸らし、前を開いた。
牧師の目の前に現れたのは、まさに天使。
少年のコートの下はニーハイソックスを履いただけの、全裸。
無駄な肉が一切ないスレンダーな躯は程良く筋肉が乗り、ギリシャ彫刻のような健康美に溢れていた。礼拝堂の暗がりに、その薄桃色の乳首が光る。
にも拘わらず、圧倒的に妖艶。
その目も眩みそうな美しい肢体を、ことさらに淫らにしているものがあった。
碧の尻の上、背中の中程まで走る疵痕。
もうひとつ、脇の下から脇腹へかけての一筋。
完璧なものに刻まれた傷跡は、聖なるものを穢したような破壊的な色香を放っていた。
「……これは…どうしたんだね?」
「ん。これ、ボクがイケナイ事をした、罰なの」
「そうか……君は何回も、いや何十回も淫らな事を貪り、挙げ句の果てに縛られ、賤しめられ、そして灼かれた。男たちに好きなように犯されながらその罰を受けた。でも、君は厭じゃなかった。むしろそれを受け入れ、歓んだ!快楽に浸った。そうだろう」
「そう……いっぱい。いっぱい。上も、下もねっ。大っきいの咥えて悦んでキモチ良くなって、その、灼かれたときは逝って、逝っちゃって、ボクもっ」
半眼になった瞳を潤ませ、上気した頬を赤らめる碧の幼い唇に牧師の乱暴な舌が差し込まれた。
碧は嫌がるどころかそれに応え、貪るように舌を絡めながら毛皮のコートを肩から落とす。
教会に獣じみた淫蕩な息づかいがこだまする。小さな嬌声は信じられないほど淫らで、卑猥だ。
白い肉は黒い法衣に腕を回し、裸の腰を厭らしく擦りつける。
牧師の指が尖り始めた乳首を撫でさすると、碧はいっそう息を荒らげて熱い吐息を漏らした。
そして牧師のもう片方の手は下腹に張り付いた陰茎を包み、指が巧みに裏側の敏感な部分をくすぐり、擦り上げるように愛撫を重ねる。
「あんっ、ぼ、牧師センセ、蜜が、出ちゃうよっ、ボクの、からっ」
「いやいや、私のだってすっかり濡れている。君に愛を捧げたくて疼いているからね」
「ほ、ほんと?……ボクで、感じちゃってる?ほんとにホント?」
碧の白魚のような指が牧師の張り出した怒張を誘うようにまさぐる。
確かめるように、根元から亀頭まで、物欲しそうな、淫らな指使いはまるで精を搾り取る堕天使。
「あ……ああんっ、センセ。これ……逞しくって、す、素敵ですっ」
「君はもうすっかり出来上がっているじゃないか。食べてしまいたい程だ」
「そ、そっちも。でもっ!…ボ、ボク美味しい、よっ?……ボクのカラダのなか、この逞しいので、いっぱいにっ。いっぱいに、してっ、お願いっ!」