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碧の物語-7
【SM 官能小説】

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碧の聖夜-1

星降る夜のクリスマス・イヴ。
街は華やぎ、ケンタッキー・フライドチキンの前には長い行列。純白の生クリームを纏ったクリスマスケーキが飛ぶように売れて行く。
どの店にもクリスマスソングが流れ、ビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」と「赤鼻のトナカイ」、そして山下達郎の「クリスマス・イヴ」が交錯し、アクセントに時折クラッカーが爆ぜ通りに紙のテープと火薬の臭いを撒き散らす。
いつもの夜より5割増しの喧しい笑い声が街を騒がせ、ネオンは空に投げキッス。

毎年必ずやってくる喧噪。
しかし、本来聖夜を祝う主役であるキリスト教徒は、実はこの夜をしめやかに迎える。
クリスマスはベツレヘムの星に導かれて生まれた聖者に対する敬意、そして感謝を捧げる祈りの夜であり、サンタクロースやトナカイとはおよそ無縁のものだ。

ミサの祝福と感謝の祈りを信徒と共に捧げ、聖書のマタイ伝を引用し説教をした後は聖歌隊や当番の信徒も早々と帰宅してしまうので、教会は思いの外静寂に包まれている。
さっきまで荘厳な旋律を響かせていた教会自慢のオルガンもカヴァーをかけられて鎮座し、バックライトをほのかに光らせる十字架が闇の中に浮かぶ。

牧師である彼は、正餐式に使った麺麭を乗せる皿とワインを入れる小さなグラスを片付けた後、戸締まりをするために礼拝堂に入った。

ふと、気配を感じる。
聖夜に相応しくランプを模した柔らかい光の中に、小さな人影がひとつ。
ミンクだろうか。その真っ白な毛皮のコートを身に包んでいる人影は、聖夜の喧噪にざわめく光に揺れるステンドグラスに向き合って、後ろ姿しか見えない。
毛皮のコート以外は、そこから伸びるしなやかなニーハイソックスに包まれた脚、そして漆黒のショートカット。
ソックスとコートの隙間に覗く「絶対領域」が妙に艶めかしい。
その人影が躊躇うように揺れ、振り返ったとき、牧師の心に電流が走った。

少女……にしか見えない。それも、とびっきりの美少女。
その頬はミルクのように滑らかで、ほんのりと紅が浮かび、唇はまるで紅玉。
凛々しい三日月型の眉の下には、例えようもなく澄んだ瞳が睡たげに光っている。
普通なら誰もが「アイドル級の美少女」と判断するだろう。
しかし、その人影には片方だけのダイアのピアスが明けの明星のように輝いていた。

牧師の隠された、特殊な性癖がそれを直感で告げる。
このミンクの下に隠された肢体を。まるでもぎたての果実のように穢れなく瑞々しい肉の予感を。
絶世の美少年に相応しい躯はきっと、どんな美酒にも勝るだろう。

牧師はかつて味わった数々の少年たちの肉体を反芻する。
聖職者としての特権を思うさまに利用し、導き、教え、貪ってきた。
あの10歳の時からたっぷり二年をかけて調教した少年はどうなった?
最初は怯え、やがて打ち解け、誘惑に負けて男色の虜となった少年は見事な性奴隷に育った。
しかしその後美しかった躯には醜い脂肪が乗り、どす黒い陰嚢をさらけ出した姿に失望した牧師は、寵愛していたその少年を施設に閉じ込め、縁を切る。
身体に毛の生えた厭らしい「馬肉」に興味はない。牧師は自分を美食家として認めているからだ。
それに性の技にしても肉の悦びにしても、とても満足はいかなかった。

牧師が望んだのは天使もかくやと思えるほどの美形であり、悪魔もたじろがせる程の淫らな性向を持つ、神に祝福された少年。
それが今、目の前にいる。


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