で-8
「その頃にはほぼ毎日、真実ちゃんと社内メールを交換しとって」
そうですね
「お互いに、あけすけに話しとったやろ」
まぁ・・・
確かに三浦さんは話しやすかったから、
ついつい女同士がナイショでするような話をフツーにしてたっけ。
「本社の草食エリート君が真実ちゃんとデートするって聞いて
なんか無性に落ち着かなくて」
「だって!三浦さんがあの人がいいって言ったんですよっ」
「うん」
困った顔の横顔は、こっちを一瞬でも見ないのは
気まずいからか、運転に集中しているからか。
「でもどうしても、真実ちゃんが他の男とデートするってイヤで」
「我がまま・・・」
そう言った私の声にさらに困った顔をした。
「俺、そいつに真実ちゃんと関わるなって釘さした」
「え?」
「あいつ、真実ちゃんと結婚して海外転勤に行く気満々やってん」
ええええ〜・・・
「阻止した」
まるでいたずらが成功した子どものように
嬉しそうに笑うけど
「それって人の恋路を邪魔したって事ですか〜?」
少し不機嫌な声を出せば
「俺、あいつより絶対エリートやから」
訳の分からない言い訳をする。
でも。素直に白状した事に免じて許すことにする。
「全部、三浦さんに仕組まれていたんですね〜・・・」
背もたれにゆったりと寄り掛かったところで
山を降り切って赤信号につかまった。