で-6
本当に寒い神戸の夜は
キスをしていた私たちの頬に寒さが突き刺さって
どんなにピッタリ抱き合っていても、その寒さは変わらなかった。
「真実ちゃん、またあったかなったら来よ。 今日は寒すぎる」
ラブラブなムードは笑いに変わり
2人で笑いながら、手をつないですぐそこの車まで戻った。
来た道を同じく戻るのに、また車とは1台も合わなくて
なんだか夢の世界のようだった。
「三浦さんとこうなるなんて、なんだか不思議ですね」
そう呟けば
「甘いな」
なんて笑いだす。
「何がですか?」
「そもそも、可笑しいと思わん?」
「え?」
「真実ちゃんが神戸に来たのは偶然違うし」
「え?」
「俺がシンガポールの商談をまとめる条件で部長に交渉した」
「はぁ?」
「契約社員は基本現地採用やろ」
まぁ確かに。
「真実ちゃんの契約が先月切れるのは知ってたからなぁ」
うそ・・・
「シンガポールの商談、デカイねん。
しかも向こうから交渉には俺を指名してきた。
これぐらいのご褒美あってもいいよな?」
初めはビックリしたけど
「絶対に真実ちゃんを手に入れたかった」
2人きりの車内で、嬉しそうにそう言われたら
三浦さんの画策なんてどうでもよくなった。