答え-3
ご飯を食べ終えて
お風呂を沸かしている間、
2人はソファーに
座りテレビを観ていた。
CMになるとタクミが
ふと思い出しジーパンのズボンから
あるものを取り出そうとする。
「ねぇ、、ほら、これ。
つけてみた〜 」
「? 、あ。 」
タクミは手に
ちづるがプレゼントした
ダークグリーンの
キーケースを持っている。
ボタンを外し、
中の鍵をちづるに見せる。
鍵が、2つ付いている。
どちらも同じような形だ。
2つとも、ここの市営住宅の鍵だと
すぐに分かる。
ちづるが言う。
「どっちが、ここの?」
「ん? 見分けつかないから〜
俺んちのはマジックで、、ほら 」
「ぁ。 」
タクミの家の鍵に
黒い点が書いてある。
背中を丸めて
両足をソファーに乗せている
体勢のタクミが鍵を眺めて言う。
「ちづちゃんちの鍵、、
ちょっとだけ、持ってていい?」
「 ぇ? 、、うん。
、、、、でも、 」
「 うん。
引っ越しちゃうまでの間だけ〜
新婚ごっこ。 させてよ。 」
「、、ふふっ なぁに、、それ 」
「、、、、、。 」
「、 、 、、、。」
隣に座っているタクミの顔を
見なくても分かる。
タクミの寂しさが
寄り添っている肩から伝わる。
テレビではCMが終わり、
バラエティ番組の続きがやっている。
若い芸人がスカイダイビングに
挑戦しているのを観ながら
ちづるは小さな声で
「怖そう」と呟く。
タクミが小さく寂しそうに
ふっと笑う声を聞いた後、
テレビを観たままちづるは言う。
「 ぁ、 そういえば、、。
言ったっけ?
うちの実家、ここから近いの 」
「、、、うん。
前に、聞いた。 」
「、、、うん。
モノレールでは、、
確か3駅 だよ。」
「、、、、うん。」
「、、、。
引っ越したら、、。
泊まりに、来ていい?」
「、、、、ん 」
「、、でも、、、あれだよね?
間取りも、ほら、、
ここと同じだし。
お互い新生活? に、なるのかな。
タクミ君は、
もう始まってるけど、、、。
なんか、、そんな感じ
ないかもね 」
「、、、、、。」
「ぜーんぜん、っ 、
今と変わらなそうだなぁ〜 」
「、、、、、、。 」
「、 、ぅん、、。
なんにも、 変わらなそ 」
その時。
風呂場から機械の音声で
《お風呂が沸きました》と
音が流れてきた。
ちづるは「入ってくるね」と
タクミに声をかけて、
立ち上がる。
タクミはうつむいてポケットに
キーケースをしまう。
そのあと再びテレビを観る。
言いようもない寂しさに
胸が締めつけられていた。