勘違い女にお仕置きを!-2
『別にいいぞ。その分、お前が被るんなら幾ら下げてもオッケーだ』
『勘弁してくださいよ』
『それよりも〆の支払いは用意できたのか?負け分の金利、明日中にきっちりツメろよ』
裏カジノの借金を持ち出されると引き下がるしかなかった。
取り敢えずアピールのために何かをしないといけない。勝也は無駄とは思いつつ、物件情報に載せ直す写真を撮りに来ていたのだ。気乗りしない勝也は、ただでさえイラついていた。
撮影を終えた勝也は、気分を変えるために、さっさと【物件】の戸締まりをしてソープにでも行こうと思っていた。
さっき開けた建物の鍵はスラックスのポケットの中だ。勝也はポケットから鍵を取ろうとして、手にしていたデジタルカメラをポーチに立つ郵便受けの上に置いた。
その勝也の後ろを追って、女子高生の2人が敷地に入ってきた。
「おい、おっさん。人のパンツ撮っといて何逃げてんだよ」
里美が詰る一方で、江梨子が郵便受けの上のデジタルカメラに手を伸ばした。2人は言い逃れができないように、証拠を突き付けようと思ったのだ。
「お前ら何やってんだ!人の物を勝手に触るんじゃねー!」
勝也が凄んだが、江梨子は気にせずデジタルカメラを操作した。
「うっせー!この証拠と一緒に警察に突き出してやるからな」
里美はこれ見よがしに携帯端末を取り出して、110番通報する真似事した。しかし、盗撮の証拠を突き付ければ、小遣い稼ぎになるため、実際はそんなつもりはなかった。
「どう江梨子?どんなの撮られてた?」
里美が勝也を目で牽制しながら江梨子に聞いた。しかし、江梨子から返ってきた答えは予想とは違っていた。
「あれ?おかしいな。写ってない…」
いくら画像を繰っても、出てくるのは建物や、その周囲の画像ばかりだった。
「へっ?マジ…」
戸惑う江梨子の声に、里美は拍子抜けした。
「だから言ってんだろうが、返しやがれ」
この時点の勝也は、イライラはしていたが、まだそれほど怒ってはいなかった。誤解が解けたのなら、謝罪すれば嫌味の一つを返せば気が済んでいたはずだった。そんなことよりも、早く戸締りをしてソープに行くことが勝也の頭の中を占めていた。
しかし、この2人は自分が特別な存在だと勘違いしていた。
「おっさんが紛らわしいことしてっからだろうが!」
ばつの悪くなった江梨子は、謝るどころか逆ギレ気味にデジタルカメラを投げ返したのだ。
「おわっ!」
勝也は頭の上を飛んでいくデジタルカメラを、慌てて手を伸ばして掴み捕った。
「里美、行こ」
その隙に、この場を立ち去ろうとした江梨子に促され、里美も慌てて踵を返した。
元々イライラしていた勝也は、ここまでされて黙ってはいなかった。
「ちょっと待て!」
その声を無視して歩き始めた2人を追いかけて、勝也は後ろから襟首を掴んだ。
「きゃっ!何すんだよ!離せよ!」
「おっさん、痴漢かよ!」
2人は悪びれることなく勝也に罵声を浴びせた。さらにここ最近、怖いもの知らずになっていた江梨子は、その勢いで勝也の脛を足蹴にした。
これに勝也はぶちギレた。
「てめー、ふざけやがって!」
勝也は江梨子の髪を掴むと、前後に揺さぶった。