復縁-1
「私、何か手伝おっか?」
「ううん大丈夫!そこで休んでなよ。」
美術室、風馬君がこの学校へ突如私の前に現れ、そして恋をする…、その時まで気にも留めて居なかった。だが今となっては彼の大好きな彼の所属する部室。
私も彼より早く部活を終え彼の居る部室へと早々に足を運んだのだ。
「他の部員は?」
「帰った、明日の準備もあるしね。」
明日は地元市民会館で美術部による絵画展示会が行われるようだけど…。
「…大丈夫、なの?」
私は恐る恐る彼に心配の声を掲げる。
「大丈夫って、何が?」
「…だって、あんな事があったばかりじゃない。」
あんな事と言うのは勿論八重樫さん、風馬君のお父さんになる筈の人が殺された事だ。
おばさんも所々悲しそうな顔を浮かべるようだけどそれでも息子である彼と改めて二人三脚で明るい人生を歩もうと努力し、風馬君自身も忘れないように気にしないようにしている、まっちょっと矛盾しているが。
「だからこそだよ、幾らショックだからって落ち込んでばかりもいられない、部屋に引き籠ってたりでもしたら八重樫さんに怒られちゃうし、それに僕がそんなんだと母さんだって悲しむ。」
悲しむ母親へ向けた「母さんは僕が護る!」今でもその雄姿満ち溢れる言葉が脳裏から離れられないでいる。
「……あ、あの時はそう言ってしまったけど、今にして思うと…恥ずかしい。」
顔を赤くし、バツ悪そうに部室の片づけ作業を再会する。
ふふ、可愛い。
「あれ、稲葉さん帰っちゃいましたか?」
と、そこに後輩肌感溢れる眼鏡に長髪に顔にそばかすの男子がやって来て。
「霧島君。彼女ならもう先に帰ったよ。」
「そうですか、なら良いんですが、失礼しました。」
目的を果たすと早々に去って行った。
稲葉さん、かぁー。
彼女は嘗てこの風馬君に想いを寄せていた、当時はまだ風馬君の事好きではなく、どうにかして彼女と彼がくっついてくれれば良いと望み、巴ちゃんとちょっとした努力もした、
けど予想外にも私が彼と交際する事となり、裏切りと失望感から私達に猛攻撃をしてきた
それでも戦意を失ったかのように私達が彼女を止め、今でも彼と同じ美術部に居る。
時より心配になる、彼女が風馬君に言い寄ったりまぁないと思うが万が一彼女が彼に何か嫌がる事をしでかすかと思うと…。
「さて、こんなものかな。」
作業を完了した彼が腰を上げ、目と閉じ一呼吸し額の汗を腕を拭う。
「明日、時間が空いたら時にでもメールする。」
「うん。」
大丈夫、かな。
まるで初めてのお使いに出す母親のように心配になってきた。