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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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復縁-2

割と広い市民会館のホール。そこに案の定僕ら美術部員が描いた作品の数々が展示されている。

「この絵は君が描いたのかね?」
「はい、近くの川原をモデルに描きました。」
「ふむ、上手だねぇー。」
「有難うございます!」

そう褒めてくれたお爺さんの去って行く背中に向かってそうお礼を力強く言って頭を下げる、やっぱ自分の絵が褒められるのは嬉しい事他ならない。

「ホント上手ね…。」
「…稲葉、さん。」

何処か大人ぶった低いトーンでそう僕に声を掛ける彼女。

「…君の作品も観たよ、とっても美味しそうな果実だったよ。」
「そう?」
「うん、果汁の垂れる感じ何か表現力が凄いよ、作品ってのはいかに相手に伝えあるかだからね。」
「覚えててくれたんだ、私が貴方と出会った時、果物の絵を描いて、それで。」

確かそんな事もあったな、あの時彼女とてもムキになっていてそれを見かねて僕が助けたようで。

「…彼女とは、仲良くやってる?」
「何、急に…。」

本当に唐突だ。

「勿論だよ!だって自分の恋人だもの。」

僕は若葉ちゃんをどれだけ愛し、将来も幸せに生きるかも事細やかに彼女に語った。

「だから、彼女は僕にとって。」
「良いなぁー羨ましいー。」

話を遮り自分の感想を高らかと言い出す。

「稲葉、さん…。」
「喧嘩とかしないの?」
「……しないよ、したとしても後で仲直りするよ。」

やっぱりまだ諦めきれていないのか、ならば僕だって。

「君の方こそ好きな人、出来た?」
「…うん、出来たよ。」

それを聞いてホッとするも、その期待は一瞬で砕け散る。

「今、目の前に居る…。」
「っ!はぁ。」

神妙な空気、でも辺りでは構わず人がスタスタと歩く。

気持ちは分かる、僕だって似たような事、していた訳だし、でも!

「別れないよ僕らは、稲葉さん。さっきの聞いたでしょ?僕にとって彼女はかけがえのない存在、傍にいるだけでとても幸せな気分になるんだ、だから若葉ちゃんの居ない世界何て僕には考えられない、だから…。」
「良く言うわ、人を傷つけて…分かる?あの時私が貴方を殺人犯として警察に突き出した時、腹いせに他の貴方の親しい人達も巻き込んでやろうと思ったその日をっ!」
「っ!その事に関しては言い訳する気もない、悪いのは僕らだ、でもその件だって言った筈だよ?不運な事故だって。」
「そんな簡単な言葉で片づけないでぇ!」
「っ!」

彼女はまるで切っても切れない糸のようだ。

「…じゃーどうすれば気が済むの?」
「気が済むって随分な言い方ね、心優しい優しい君が。」
「…確かに僕に恋人も居なかったらここまでキツイ言い方はしない、でも今はそうする必要があると判断した。」

優しさと甘やかしは別。ここで変に彼女に同情したらややこしくなって悪い道に誘われかねない、もし稲葉さん相手にそんなんで弱腰になったら若葉ちゃんだっていい気はしないと思う。

「私と付き合って、勿論言いたい事分かるでしょ?」
「……。」

やっぱりそうきたか、でも譲れない負けない僕と彼女の為に。

「断るっ!!そんなの絶対しない。」
「彼女が傷つくから?」
「そうだ。」
「じゃ私はどうなっても良いんだ。」

はぁ、ああ言えばこう言う。

「嫌だって言ってる人間に何度もしつこく食い下がってどうなるの?お互いいい気は。」
「そんなの関係ないよ!私は諦めない!君がどう屁理屈こねて私に冷たく接しても必ず振り向かせてやる!」
「何をする気?言っとくけどこっちだって負けないから、また僕を例のあの事件をあんな古い事件を釣り上げてさらし者にしたって無駄だよ。」
「勿論、あぁも何度やっても徐々に効き目は薄くなってくし、釣り上げるこっちも多少のリスクはある訳だし。」
「自宅に押し掛けるとかも止めてよ、それじゃストーカーだから。」
「ふふ♪どの口が言ってんだが、まっ通報でも何でもすれば?今度は私が刑務所に行く番ってか、でもそんなんで解決出来る程私は甘くないわよ。」

本来明るく輝かしい筈の展示会が僕らの頭上にのみ暗雲が立ち込めているようだ。

「本当に、困った人だね。でも君の台詞そっくりそのまま返す、僕らだって君何かのしつこい付きまといに屈したりしないから。」
「……。」

急に黙り出した、ようやく折れたか?

「…ほら、そろそろバスで移動するから。」

しかし僕の言葉に耳を傾けるでもなく、暗い表情でその場を動かず。

気にはなりつつも僕は彼女を放って置き、会場を後にしようとする。

「アンタの家族がまた一人消えるとしても?」

え?


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