Friend's CHOCOLATE-2
「…携帯は?」
「あー…ダメ。圏外だぁ…やっぱどこも電波入んない…」
アタシは携帯を上下左右前後に動かしてみるものの、『圏外』と表示されたまま。嗚呼、絶望的…。
「日菜、お弁当食べなよ…」
「…ちょっと訳有りで、今無いんだ…」
「そう…」
理由を聞こうとも思わないほど疲れていた…。あーあ、どうしていっつもこうなるの?アタシばっか…何でツイてないの?アタシが悪い訳じゃないのに…。イライラする、ムカツク…。
「…あそこで右に行けば良かったんだね」
横にいる日菜が顔だけアタシに向けた。
「だから、さっきゴメンて言ったじゃん」
何か日菜の言い方…腹立つなぁ。
「何その言い方…感じ悪いよ」
次は上半身もこっちに向けた。だけど、アタシは依然前を向いたまんま。
「謝ってんのにコノがウダウダ言ってるから…!」
「ウダウダなんか言ってないじゃん!こうすれば良かったって言っただけでしょっ」
「それがウダウダっていうのっ!!」
アタシは日菜を睨み付けた。日菜もアタシを睨んでいる。
「はぁ!?逆切れしないでよっ。ったく…話になんない…」
「どっちが!?…まったく…」
アタシたちは、また喋らなくなった。最悪。遭難はするし、喧嘩はするし、喉乾いたし、お腹空いたし…。どれもこれも日菜のせいだ!日菜が右に行ってたら…時間通り広場に着いてた。こんな目にも合わなかった。…でも、ホントに日菜だけが悪いの?アタシは日菜に付いて行ったのに…アタシに責める資格無いんじゃないの?それよりも、アタシたち助かるのかな。何か…怖いよ…。このまま助からなかったら…すごく怖いよ。
「このまま…死ぬのかなぁ…」
異様にアタシの声が響いた。
「哲希とお弁当食べれたかったな…」
「…日菜だって、伸とお弁当食べたかった…」
膝に顔を埋めたまま、日菜が隣でボソと呟いた。
「え、伸?…何で…」
日菜は顔を上げて、少し笑った。
「実はさぁ、日菜…伸のこと好きなんだ」
「…知らなかった」
「そりゃそうだよ…言ってないもん。哲希のことでいっぱいいっぱいのコノには言えなかった」
「…日菜」
「もっとぶっちゃけると…お弁当、伸が持ってるの。上まで俺が持ってくって…で、一緒に食べようって…」
アレ?それって…。
「哲希と同じ手法だ」
日菜はちょっと目を大きくした。そして、プッと吹き出した。
「そういうことだったのかっ」
アタシも吹き出した。
「ククッ…計画的なんだねっ」
「ごめん、日菜…アタシ、焦り過ぎて日菜に当たっちゃった…」
「日菜も、こうなったのは自分が原因だなんて認めたくなくて…ゴメンね、コノ」
アタシはうーんっと伸びをして、勢いを付けて立ち上がった。助からない訳ないじゃん!!死んでたまるか!!歩けないけど、やれることはあるじゃん!!
「一応呼んでみよっか?スーパーマンみたく助けに来るかもよ!!」
ふらつきながら日菜も立った。
「うん!!…せぇーの」
「哲希ィーっ!!」
「しぃんーっ!!」
「何?」
…はああぁぁぁあッ!?
アタシたちは前につんのめった。後ろから…哲希の声が…!!振り返るとキョトン顔の哲希が立っていた。
「…なな、なんでそこにいるのっ!?」
「何でって…二人とも遅いから迎えにきたんだよ。…おーい、いたぞぉ!」
哲希は林の奥に向かって叫ぶ。するとガサガサと音がした。