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没作品 硝子の心 処女作
【若奥さん 官能小説】

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36歳の婚活-1

直人との出会いは結婚相談所からの紹介だった。綺麗な短髪を揃えた直人はまだ若くもうすぐ36歳になるわたしとひと回り歳が離れていた。

「今日、家においでよ」

丸の内のトキアにあるイタリアンレストランで紅茶を啜りながら直人はさらっと誘ってきた。

「いいけど、まだお昼食べたばかりだし、そもそも14時よ」

わたしは何の躊躇いもなく直人にこれから銀座か有楽町でわたしが眺めたかった新着の秋の新作を見に一緒に連れていこうと考えていたからだ。

「今日はさ特別なんだ。家、片付けてきたんだ」

屈託なく笑いならが話す直人は可愛らしく出会って2回目の食事だったが一度部屋を見てくるかぐらいの軽い気持ちで「どんな感じなのかしらね」と承諾の笑顔を返していた。

会計をする直人とわたしは遠目に見ても不釣り合いな親子ではないが恋人でもなさそうな歳の離れた姉か叔母そのものを映しているのは仕方がないことだった。

わたしは一度結婚に失敗している。だからこそ今回は早くまともな男を捕まえて36歳という微妙な歳から目を逸らしたくて相談所から紹介されるがままに直人と会うことを決めて向かえた2回目の食事だった。

初回は当たり障りのない育ちや、今の仕事、これからやりたいこと、行ってみたい場所やいったことのある海外の話など直人はわたしの話を真面目に聞きながら時には頷き被せるように話題を載せて二人で笑いあって「また、会えますか」と帰り際に屈託なくわたしに問う誠実な若者そのものだった。

丸の内から直人の家までは銀座線を乗り継いで日暮里近くに移動した。日暮里から少し明治通りに歩くと、場違いのように高層なコンシェルジュが居るだろう立派なタワーマンションの前で「ここだよ」と直人は恥ずかしそうに教えてくれた。

コンシェルジュは誠実と堅実を確りと伝えうるいかにもな感じの佇まいで何の疑問を見せることなくわたしたちに見られてもいいように微笑みを保ったままエレベーターの方向を向いているだけだった。

「直人さん、凄い所に住んでるじゃない。何階なの」

エレベーターに乗るなりそう聞いたが直人は38階を押して何も答えることなく恥ずかしそうに不器用にはにかむだけだった。

「ここは42階まであるんだよ。20階と40階は居住者専用のラウンジがあって地下にはプールも備えている。だから駐車場は地下2階から5階まであるから車の出し入れで渋滞することもあるんだよ」

「マンションで渋滞なんて初めて聞いたわ。とんでもないわね」
「それにしても高いんじゃないの」

36歳のわたしの感覚では24歳の男性がこれだけの物件を購入することは考えられず親に貰ったか資産を持った家庭だったのか興味を隠しきれずにそう聞いてしまった。

「いや、違うんだよ。まぁ、まずは部屋を見てよ。頑張ったんだからね」

直人は38階に近づく液晶に映る数字を見上げながらそう言っては綺麗な笑顔のままわたしを見ることなくずっと上を見上げていた。

つられるようにわたしも天井を見上げると、両角と正面に盤石の警備カメラが分かりやすい角度で確りと、わたしたちを捉えていた。
コンシェルジュだけでなく警備会社もこの映像を見ている、わたしは、36歳になる微妙な歳頃であり直人はまだ24歳。これを観る人は何と思うのだろうかと苦笑いを隠すことしかできなかった。

「着いたよ。目の前がうち」

直人はカードを翳して重厚な音を立てて落ちたセキュリティロック解除の音を確かめながら扉を開けてわたしを向かえいれてくれていた。

「すっごい綺麗じゃない。何なのこれ」

率直な感想だった。玄関はまっ更な高そうな石段造りでリビングに向かう長廊下は恐ろしいほどピカピカに磨かれ奥行きのある高い天井から洋洒なシャンデリアがふんだんにぶら下がりその奥の天井両端から強いまっさらなライトが部屋一面を照らし出しているようだった。

「靴は適当に置いてはやく見てよ」

直人は嬉しそうにリビングに向かいながら声をかけてリモコンを押すような仕草で廊下の先にあるカーテンが一斉に持ち上がる音を響かせてわたしを驚かせていた。

「ちょっと、今の何なの。カーテン自動で空いちゃうものなの」

買ったばかりの美しいイギリス製のヒールを揃えわたしは直人の待つリビングを開けて圧倒されてしまった。

リビングから覗く眺望は都内を完璧に映しだしコの字に配置されたソファーは高級ホテルにあるそのものより遥かに高そうでダイニングには真新しい調度類がきちんと整頓されて家というよりスイートルームそのものだった。

「凄いでしょ」

少しぎこちない仕草で直人は答え紅茶いれてくるねと遠くのダイニングに行こうとしていた。

「トイレ借りてもいいかしら」

わたしはまずは落ち着こうと化粧を直そうと教えられるまま信じられなく広いトイレにある場違いな鏡台に向き合ってグロスを塗り直し36歳の緩んだ身体を確かめるように今日着てきたごく普通のアナウンサースタイルを真似したフランス製のミニスカートとイタリア製のキャミソールを質してリビングに戻ったところだった。


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