嘘-1
2人は沈黙したまま
しばらく見つめ合う。
問い詰めたちづるのが、
問い詰められたように
動揺しているのがタクミの目から
見てよく分かる。
タクミが、
お腹をさすりながら口を開く。
「嘘? 、、、
っ はーー、、、。」
「 ぁ、、 〜っ 」
「、、、。
ところで さぁ。」
「 んっ!? 」
お腹 さすってる、、、
嘘じゃ なかったかも
「なんか、、臭くない?」
「 え? 」
「変な匂いする〜。」
タクミは少し上をむいて
くんくんと鼻から息を吸っている。
ちづるはハッとして立ち上がり、
壁にかかっている自分のコートに
近づいて言う。
「 ぁ! ごめんっ!
この匂い、、 だと思う、、」
「 ?」
コートのポケットから、
小さな小瓶を取り出し
タクミに渡そうとする。
「正露丸。 、、デス。」
「 え? せーろがん ? 」
「、、下痢とかに、効く薬。」
「 、、、、。」
「 ? 」
タクミは薬を受け取りながら
ちづるを見上げて言う。
「お腹痛いって、
嘘だと思ってんのに
薬持ってきてくれたの?」
「、! 、、 ん、 。
でも、、だって
本当かも しれないし 」
「、、ふーーーん、、、。」
ちづるは
ベッドに戻り再び座る。
タクミは、
面白いものを見るような目で
ちづるをじっと見ている。
ちづるの目が泳いでいる。
悶々と、考えていた。
「、 、 、、〜っ 、」
で 、、 、
で ?
嘘なのか
嘘じゃないのか
どっちなんだろう
私 ちゃんと
問い詰めたよね!?
なのに なんか タクミ君
落ち着いてる、、、
なんで
何も 言わないんだろ
お腹 さすってるし
やっぱり本当に
痛いんだ
「 っ はーーー、、、」
再び、タクミはため息をついて
お腹をさする。
そして呟く。
「 ちょっと、、
そっちで 休もうかな、、。」
「 ぇ? 、、ぁ 、」
タクミは立ち上がると、
ちづるの隣に座る。
ちづるよりも背の高いタクミは
上半身を猫背に丸めて
ちづるの肩に頭を乗せて
よりかかる。
無言で自分のお腹を
さすっている。
「、、 はぁ 」
タクミが
お腹をさすりながらちづるを見る。
至近距離で見つめ合う。
タクミの目の奥が寂しそうだ。
「、、 〜っ 、 、」
「 ? ちづちゃん ? 」
しばらく見つめ合ってると、
ちづるの目にじわりと涙が浮かんだ。
「、 、 、、 、 」
タクミ君の事
1番 好きなのに
なんで私
鈍感なの?
いつになったら
タクミ君の事
理解出来るようになるの?
「 どした? 、、泣いてる?」
「、っ 、泣いてないよ。
、、、タクミ君 。」
ちづるは、涙を飲み込む。
情けない顔にならないよう
気持ちを引き締める。
タクミのお腹に手を伸ばして言う。
「お腹、、痛い時は、、
時計回りのが、いいんだよ。」
「 ぇ? 」
「おへその上が
12時だとするでしょ?
だから、、 こっち 」
ちづるが説明しながら、
タクミのお腹をさする。