恋のアドバイス-1
***
3月上旬。
ちづるは職場の人間
数人と飲みに行った。
その飲み会の帰り道に
吉川に送ってもらった事を
タクミに見られてしまい、
喧嘩になった。
飲み会は
吉川が提案したものだった。
職場のレストランから近い、
雑居ビルの
7階にある和食の居酒屋。
ちづるが離婚した事は
職場の人間はほとんど知っていた。
その話も聞きたい、と
吉川が言い、飲み会の流れになった。
飲み会は夕方6時から始まる。
掘りごたつの、
少しだけ仕切りのある
半個室のテーブルで5人で
乾杯をして飲み始めていた。
乾杯をしてからしばらく
5人はワイワイと
仕事の話をする。
1時間ほどして
皆2杯目、3杯目を注文する。
仕事の話から徐々にプライベートな
話になってゆく。
ちづるは、この飲み会で始めて
吉川が離婚している人間だと
いう事を知った。
吉川には娘がいるらしく
今は別れた元奥さんが
実家で娘を育てている、
と、ちづるに話す。
ガヤガヤと賑わう居酒屋の席。
ちづるは吉川の隣に
座っている。
皆、なんとなく
恋愛話や結婚生活に
ついての話になる。
ちづると1番仲の良い
和美という名の主婦も結婚について
色々と語っていた。
ちづるは少しためらったが、
自分に今、付き合っている彼が
居る事をカミングアウトした。
皆、驚いている様子だった。
和美がテンションの高い声で
ちづるに聞く。
「マジで!?
どこの人なの!? 」
向かい合わせに座っている
和美の顔がぐっと近くなる。
少しウェーブのかかった髪を
耳にかきあげる和美の目が
キラキラと輝いている。
ちづるは、少し引き気味に言う。
「まぁ、 あの、、
んーーと、近所の人、、」
「本当にーー!?
いいじゃーん!
年は、いくつ!?」
「、! 、、、。
年は私より かなり 下。
ってゆーか、、結構、、
下 。 」
ちづるの周りにいる
4人のテンションが
一気に上がるのが分かる。
ちづるの隣には吉川が座っている。
坊主に近い茶髪の頭に
白いパーカー。
がたいの良い身体の吉川が
ちづるに顔を近づけて聞く。
「結構下って、いくつだよ。」
「 ぇーーと、、
それは、、 うん
本当、かなり、下で〜〜
うん 。 」
「いや、うん って。
言いにくそー、、
っ ウケる
ここは、
聞かないであげましょうかねぇ?」
吉川は焼酎を飲みながら
和美にそう問いかける。
和美が言う。
「ぇーー!?
ちょーー 知りたいっ!
まぁ、 うん、、
あんま聞くと私、
嫌なおばさんになっちゃうからなー。
やめといて、あげますかねぇ? 」
和美は赤ワインを飲みながら
ニヤニヤしている。
もう、そこそこ
出来上がっている様子だ。
「もしや、、
20代、前半!とかっ!?」
和美が言うと、ちづるの目が泳ぐ。
それを見ている吉川が言う。
「まっじ かよ!?
わっけー、、。
まぁ、ちづるなら、、、。
んーー、 ありかも。
いや、でも前半?
びっくりだわ。 」
「 ぁ、、 〜っ 、、はは 」
10代だなんて
やっぱり 言えない
言ったら 通報されて
逮捕されちゃう かも
ちづるは小さくなりながら、
目が泳がないように
気持ちを集中させている。
両手で持っている
中ジョッキのグラスの中の
ピーチウーロンを見つめる。
吉川がちづるを見る。
吉川は、
髪をポニーテールにして
小さくなっている
ちづるを見ていると、
少しだけ苛めたくなってきた。
吉川が言う。
「離婚した事は言った?」
「 ぁー、、、まだ、、。
なんかタイミングが
難しくて、、、。
でも、そろそろ言おうかな。
ちょっと落ち着いてきたし。」
「、、、。 大丈夫なの?」
「 えっ? ? 」
「離婚の事。
彼、引かない?」
「 え? 、、引く? 」
「 うん。」
「 ? 」
「いや、だから。
若いんだろ? 彼氏。」
「 、、うん。」
「じゃあ、、引くんじゃね?
平気? 」
「 、、ぁーー、、。
なんか、軽い女だな、みたいな?
すぐに別れちゃうよーな、、。
あ、バツイチになる事に? 」
「 はぁ? いや、違くて。」
「 ? 」
「、、、重いって思われない?」
「 え?」
「自分がいるから、ちづる
離婚したのかなって
考えるんじゃない? 」
「えぇ?」
ちづるは驚いて吉川を見る。
和美も興味津々といった感じで
話を聞いている。
他の2人は、もう酔っぱらっていて
大声で別の話をしていた。
ちづるは吉川に言う。
「 や 。
私が離婚したのは、
もう、、、
うまくいってなかったからで。
彼は、関係ないですよ? 」
「いや、それは。
ちづるの都合だろ?
彼がどう受け取るかは、
別問題じゃん。」
「、! ぁ 。」
そっ か