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《見えない鎖》
【鬼畜 官能小説】

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〈蜉蝣の飛翔〉-9

『フフ……けっこう稼がせて貰ってるし、オマエにも〈お小遣い〉をやるよ。これからも一緒に稼ごうよ……』


トントンと足音が聞こえ、それが遠ざかるとドアがカチャンと鳴った。
それでも暫くベッドから出られなかった花恋だが、恐る恐る顔を覗かせると、もうそこには誰も居なかった。
そして消えた裕太の代わりに、一万円札を折って作られた紙飛行機が床に落ちていた。


(ばッ!?…バカにしてッ!)


花恋は、やおら起き上がると枕をドアに投げつけ、足元の紙飛行機を悔しげに睨んだ。

仮にも妹の貞操を犯し、プライベートを曝し物にして性の商品にして金品を得る……。

こんな事が許される訳がない。
しかも、紙幣までも玩具と同様に扱い、それをもって花恋を侮辱したのだ。


この一万円を稼ぐのに、どれだけ働かなければならないのか、あの男は分からない。
勤労の汗を知らず、他人の役に立てる人になるまでの努力も知らず……家計を助ける為にアルバイトをして働いた過去のある花恋には、裕太は唾棄すべき男という認識を新たにするしかなかった……。


『みんな、お父さんが帰ってきたわよ。御飯にしましょ?』


どれ程の時間を立ち尽くしていたのか……花恋は母の声に再びベッドに潜って着替えを済ませると、腹立たしい紙飛行機を机に入れ、階段を下りてダイニングルームに向かった。



『おう。今夜はなんか豪華だな?』

『ちょっとね。週の始めだけど奮発しちゃったの』

『けっこう分厚いな。この豚カツ……』


夕食の並べられたテーブルには、もう家族全員が座っていた。
花恋は、今や大嫌いな裕太の隣が指定席だったので、嫌々でも座るしかなかった。


『ん……お母さん、この豚カツ凄く美味しい……』

『そ、そう?裕樹さんにそう言って貰えて、お母さん嬉しいわ』


花恋がこの家に来て、初めて裕樹が貴子を『お母さん』と呼び、そして『美味しい』と言ったのを聞いた。
いつもは全く無反応で、黙ってムシャムシャと食べるだけだったのに。


『あ……本当に美味しいよ!お母さんの作ったの美味しい!』


兄弟揃って、母の手料理を褒めながらパクパクと食べる。
それは花恋だけが感じる不自然な団欒の光景だった。



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