ド-7
大きなダブルベッドは、お互いに肌を触れ合うことなく眠ることができる。
私たちは端と端に身体を横たえたけど
1枚の掛け布団は、相手が少し動いただけでも
その振動が自分の身体に伝わってくる。
「助かったよ。今朝身体が痛かったんだ」
リビングのように、シンとしないように軽口をたたく主任の気持ちが
痛いほどわかる。
無音になりたくない。
「おやすみなさい。明日出社前に私が起きてなかったら
起こしてくださいね」
「大丈夫。朝ぐらい一人で行かれるよ」
「朝ごはんを、作りたいんです」
「うん・・・じゃぁ、頼むよ」
そう言う声に、ほんの少し嬉しさがにじんでいるような気がした。
薄暗い静かな空間で
同じ布団の中に、昨日まで上司だと思っていたオトコがいる。
会社とは全く違う顔で、優しく私に笑いかける。
どれぐらい経ったのか、上を向いていた主任が
ゆっくりと私のほうに身体を向けた。
私はそのまま寝たふりを続ける。