鏡【裏側】〜初恋〜-10
洋子さんは意外にも嬉しそうな声と淫媚な表情でそれを迎え入れる。
親父は指の先を浅く出し入れしていたが、次第に指は深く深く洋子さんの体内を犯してゆき、今や親父の指は根本深くまで洋子さんのつぼみを差し貫いた。
「ぃゃ…ぃ、ぃやぁん…」
洋子さんは、嫌がるような声を出したが、その表情は呆けたように半目を開き半開きになった口元からは細く涎の糸を滴らせ、薄く笑っているのだった。
（洋子さん洋子さん洋子さん洋子さん…）
俺は目を見開いたまま、阿呆のように洋子さんの名を繰り返すだけだった。
体の芯からガタガタと震えが走ったが、それが熱によるものなのかはわからない。
親父はしばらく洋子さんのつぼみを陵辱していたが、指を抜くとその場を離れ、再び戻った時、その手には金属的な光を放つ蛇のようなものが握られていた。
親父は、洋子さんの目の前に蛇を差し出すと淫猥な微笑みを見せながら蛇に付いたスイッチのようなものを押した。
ウネウネウネウネ…蛇は洋子さんの目の前で踊り出す。
それを見る洋子さんの顔にも淫猥な微笑みが浮かんでいたような気がした。
親父はチューブのようなものから透明な液を蛇に垂らすとしごくように塗りたくる。
ウネウネウネウネ…蛇は身をくねらせ踊りながら再び洋子さんのつぼみに近づく、ウネウネウネウネ…踊りながら少しづつその体内に姿を消していった。
「ああああああ！」
洋子さんの口から声が漏れたのを合図のように、親父は再び男根を握りしめ、激しく抽送を始めた。
ズチュ、ズチュ、ズチュッ
「ひいいいぃぃぃっ！」
「んぁぁ、んぁぁ、んぁぁ…ああっ…ああぁぁぁぁ」
「もっとだ！もっとよがってみせろ！振れ！腰を振れ！」
「ぅぅ…ぅ…ぅぁ、ぁん…ぁん…ぁん」
「ぁぁぁぁぁあああ！」
親父の腕は激しく振り動かされ、男根が忙しく洋子さんの秘所を出入りする。
「んあああ！駄目っ！もう駄目っ！」
洋子さんは狂ったように打ち付けられる男根の動きと後ろの孔で蠢く蛇に翻弄されるように、身を弾ませながら叫ぶ。
「まだだ！まだ駄目だっ！」
親父はそう怒鳴ると前触れもなく男根の動きを止めた。
「いやぁぁぁぁぁぁ！！」
「ぃゃ…ぃゃ…いやぁぁぁ…イカせて…イカせて…」
魘されたように繰り返す洋子さんは、俺の知っている洋子さんとは完全に別人だった。
「どこだ？どこだ！どこがいいのか言ってみろ！洋子！言えっ！」
親父は再び男根を握りしめ激しく抽送を始めると声を荒げる。
「オ○ンコ！オ○ンコ！…オ○ンコいいのぉーーーっ！」
洋子さんの口から信じられないような言葉が吐き出される。
（嫌だっ！嫌だっ！やめて！やめて！やめて！）
俺にはそれ以上見続けることは出来なかった。その場にしゃがみ込み、目を堅く閉じ耳を手で強く押さえ、現実を全て否定していた。
（洋子さん洋子さん洋子さん洋子さん…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…）
「イ、イクっ！イクぅぅぅぅぅぅ！」
「ひぃああああああああああああああああああ！！！」
全てを否定しようとする俺の耳に、塞いでも僅かな隙間から突き刺さるように、洋子さんの最後の悲鳴が聞こえた。
それから俺は自分がどうなったのかよく覚えていない。
ヨロヨロと自分の部屋に戻ったような気がするが、はっきりと意識が戻ったのは三日後のことだった。
目が覚めた時、ベッドの横に居たのはおふくろで、俺は三日間高熱に魘され続けていたのだと泣きながら訴えるのだった。
しばらく俺は学校を休み、家で過ごした。その間何度か親父と顔をあわせたが、俺から話しかけることは無く、食事の時間をずらしたり極力親父と接触する機会を持たないよう努めていた。
家の中に居ることは、ある意味俺には残酷なことでもあった。キッチンやリビングを出ると嫌でも親父の書斎が目に入り、俺に辛い記憶を思い出させる。早く学校に戻りたいな…そんな事を考えると、洋子さんと関係を持つようになる前の、何も知らずにいられた日々がたまらなく懐かしく、幼くてつまらないと思っていたクラスメイトたちを無性に恋しいと思うのだった。
洋子さんからは、俺の熱が下がってから一度だけお見舞いの電話があったが、俺は出なかった。
学校に戻ることになった前の晩、親父が俺の部屋に来た。
俺が、全身を強ばらせ下を向いていると
「洋子とはもう逢わないように。」
と言った。
「な…」
俺は弾かれたように親父の顔を見た。
「おまえを男にしてくれるよう洋子に頼んだのは俺だ。」
それだけ言うと部屋から出て行った。
残された俺は、自分の幼さと無力さに泣いた。親父という圧倒的な存在に抗することの出来なかった自分が悔しくて泣いた。声をあげて泣いた。
こうして俺の初恋は終わり、俺は学校に戻っていった。