第29話 研修、修了式-2
「もちろん『C』『D』の修了証は必須ですが、それだけでいいという理屈ではありません。 これからも各種の研修がありましょう。 その都度一定の基準を満たせば、追加の仮認定が得られます。 今回の『Dランク女子仮認定』のような大きい認定もあれば、『危険物取扱士仮認定』のように比較的範囲が狭い認定もあるでしょう。 そういった認定を多く備えていればいるほど、たくさんの修了証を獲得したものほど、有用な牝として活躍できます。 『Bランク女子』になれた場合はもちろん、仮に『Bランク女子』になれずとも、修了証の数はみなさんの牝性の証です。 社会は修了証を多く備えた牝を評価し、修了証は裏切りません」
ここまで一気に喋り、ふいに口を噤む施設長。 束の間目を閉じたのは、何か考え事をしているのだろうか。 しばらくしてから、
「卒業までにどれだけの研修に合格できるかが、みなさんの未来に繋がります。 みなさんの今後の健闘と健勝を祈り、修了証授与の挨拶とします。 みなさん、合格おめでとう」
一語一語刻むように言葉を紡いだ。
「一同姿勢を正して! 礼! そのまま待機!」
ザザッ。 副施設長の号令で、一斉に股間を屈める少女たち。 股座を斜め前につきだす不自然な姿勢を、けれど『待機』といわれては崩すわけにいかなかった。 斜めに並んだ35のおまんこの横を、施設長を先頭に施設員が去ってゆく。 最後に副施設長が去り、体育館の扉が締まって、こうして長かった研修合宿は幕を下ろした。 副施設長に替わって前に出た2号教官が、
「お前達全員第三姿勢に変更。 いまから学園に戻るので、一度だけ説明するから、聞きもらしのないように」
と告げ、説明を始める。 少女たちは慌てて慣れ親しんだ全裸がに股を作り、
「たった今をもって、お前達は『Dランク』を修了した。 学園に戻るまで、特別に『学園外に限定してCランク扱いとするが、この扱いもまた研修の一貫と心得ること。 1つ、バスの中は座席の使用を認め、隣前後での私語を認める。 今回の研修体験について互いに共有し、多角的に分析
すること。 1つ、バス内で所属団体ごとに1人を指名し、研修体験について感想をスピーチさせる。 2分以内で喋ることができるよう、簡潔にまとめておくこと。 1つ、これから配る修了証を――」
早口で喋る2号教官に、神妙に耳をそばだたせるのだった。
……。
施設を後にし、最初にバスが停まったところまで歩く全裸の学園生徒。 四つん這いで熱い砂浜を歩かされた『行きし』と異なり、『帰りし』は普通に二本足で歩いての帰還になる。 銘々は修了証をお尻の割れ目で挟んでおり、落とさないよう自然と内股になっている。
8号教官が運転するバスに乗ってからは、それぞれが自分達の経験を話しあった。 最初はおずおずと物怖じしながらだったものの、10分もしないうちに、クスクス笑いを含め、自然なおしゃべりが展開し始める。
「……なんだかんだあったけど、でも、思ってたより楽チンだったかな。 言われた通りしてればどうにかなったし、どうすればいいか考えなくても良かったしね」
「それそれ。 マジ言えてるよ、それ。 動くなって言われたら、ただ動かないだけでいいんだし」
「そうかなぁ……あたし達は結構つらかったよ。 息を止めさせられたり、関節を外さなきゃならなかったり、柔軟のギリギリまで足を拡げられたり……でも、普段の授業に比べたら、やることが『モノとして動く』ことに絞られてる分、気は楽だったかも」
「っていうかさ、ウチはボクシングの的になってるうちに4日経ったんだけど、みんなはどんなだったの?」
「あんまり変わんないと思うよ。 初日は文房具、2日目はオフィステル、3日目は外回り道具」
「ちょ、なにそれウケる! 文房具ってなんなのソレ?」
「え〜……別にどってことないよ」
「いいから教えなさいよ〜。 ウチもちゃんというからさ。 ウチらはサンドバックで、ひたすらお腹を叩かれてました! はい、次はそっちの番!」
「あんまりいいたくないんだけどなァ……いわなきゃダメ?」
「どうせスピーチするんだし、もったいぶらずに教えなさいって」
「色々あって……例えば『鉛筆削り』の時は、口で鉛筆を削るの。 歯を横にシュシュッてして、フツーに尖るまで齧るわけ。 『シュレッダー』の時も口だったかな。 唾で溶けるタイプの紙だから、どんどん押し込まれるんだけど、それなりに溶けて呑込めるんだ。 初日はひたすら鉛筆を齧って無駄紙を食べて、マジで顎が変になった」
「うっわ……それ、さりげにキツそうなんだけど」
「うーん。 サンドバックも大概だと思うけど。 まあ、もう紙はしばらく見たくないかなァ」