第15話 先輩後輩-2
「正直いうと、合宿、ちょっぴり楽しみになってきちゃったりしてるんですよ。 えへへ♪」
狙った結果いい班になるより、偶然気心がしれたグループになれる方がずっといい。 かみさまほとけさま殿方様、皆さん揃ってありがとうございます、って感じになる。 ただ、そんな私と先輩には明らかに温度差があるわけで。
「幸せそうなところに水を差すようで恐縮だけどさ」
「あ……すいません」
「合宿っていっても、学園の行事なんだからさ。 どんなことするか分かってないにしても、おおよそ見当はつくでしょう」
「は、はい」
「まさか本気で、合宿がのんきに楽しめるような代物だと思ってるの?」
「そりゃまぁ……そんなわけない……ですよねぇ。 でも、少しくらいは楽しいこともありそうかなって思っちゃってるんですけど……ダメですかね?」
「もう。 私の口からいわせないで。 いつまでも新入生じゃないでしょうに」
「う……すみません」
真顔で窘められてしまった。 ちょっとしょんぼり。
とはいえ、そこまで落ち込むようなことじゃない。 合宿も学園風な厳しいものってことくらい、余裕のよっちゃんで想定内だ。
「ところで先輩、合宿ってどんなことするんですか?」
「ん? 知りたい?」
「是非! お願いします!」
全力で頭をさげる。 勢い、その場で土下座する恰好に。 もっとも普段から土下座しなれている身分なので、床におでこをつけることには微塵も抵抗は感ない。
「いや、まあさ、そこまで大したことじゃないよ。 ひたすら『ジッと』してるだけ。 学園で習ってるのは、これは『自分から動く』方向になるんだけど『自分から動く』前に、ちゃんと『動かない』こともできなきゃいけない。 だから、日がな一日ジッとして、明け暮れるだけ」
平身低頭する私に苦笑する先輩。
「お前たちってばCグループ生だから、将来Cランクになった場合に備えて、教官がCランク生としての生活を再現してくれるんだ。 合宿っていっても、主役はお前たちじゃないからね? 合宿対象はどこかの施設の研修生で、多分Bランク予備軍なんじゃないかなぁ。 じゃあお前たちは何かっていうと、お前たちは合宿の『備品』なの。 教官が持参した『備品』ってことで、合宿の諸々を円滑に進めるお手伝いをすることになる」
「び、『備品』ですか……ヒト扱いですらないんですか」
「学園なんだから、そういうモノだって諦めてるんでしょ? 未だに自分が『道具』以上だなんて思ってるとしたら、ただのおバカさんでしかないよ」
「それは、まあ、そうなんですけど……」
サラリと酷い言いようだ。 人格を否定されるのはしょうがないし、慣れてもきている。 自分の『持ち物』を道具に見立てることに納得もした。 ただ、それをあからさまに告げられると、やっぱり心にさざ波がたつ。