第11話 模擬エスコートC-4
『映画研究会』
旧世紀初頭から末期に至る映像作品の鑑賞、そしてオリジナル映像の撮影を活動の柱に据えているようです。 壁のポスターには様々な作品の寸評が並び、入口正面に設置されたスクリーンにはプロジェクターを介して自作と思しき映像作品が流れていました。
映像は『コマ撮りアニメ』でした。 1コマずつ静止画をとり、静止画を繋げることで動画にする、という手間がかかる手法ですね。 画面の中には『裸のお尻』がアップで映されています。 お尻にはデカデカと女の子の顔が描いてあって、お尻の脂肪を伸ばしたり、谷間を拡げたり、息んだり、肛門を拡げることで、笑ったり、驚いたり、ベソをかいたりと様々な表情の差分になりました。 そんな『顔を描いたお尻』がいくつも登場して、お尻で自在に表情を操ります。 正直いってストーリーは全く記憶にありません。 ひたすらお尻が登場して、クルクルと表情を変えて去ってゆく――延々それだけのアニメです。 でも、決して手抜きなんかじゃありません。 差分の数からして、何度もお尻に顔を描き直して、それを違和感がないように繋ぎ合わせたんでしょう。 それだけでも大した手間です。 更にお尻の筋肉で調整しながら、微妙な表情を演出し続けていました。 余程練習したればこそたかがお尻の動きで演技が可能になったことは間違いありません。 編集技術も相当なレベルで、しまいには顔なのかお尻なのか分からなくなるくらい、継ぎ目を見抜かせない丁寧なアニメーションでした。
鑑賞対象の映像作品を列挙すると、『エマニュエル婦人』『美しき諍い女』『ショーガール』『女囚蠍(さそり)』といった古典から『おんな犬』『全裸バレエ』『うんゲロみみず』『またがりオマンコ航空』のような企画モノまで幅広く扱っていました。 寸評をチラ見すると『――女性の裸体に価値を認めつつ、神聖性を拒否することで、ただの性欲発散の道具にしようと試みた時代の風潮が――』『――女性の価値を性と切り離し、嗤い者、蔑まれる者に貶めて精神的優越感の源泉にするべく――』『――女性は機能でもって評価すべきであり、人格も尊厳も必要とするべきでないという発想を具現化した――』などなど、それっぽいコメントがひしめいています。 ということは、ここに列挙された作品群の全てに、一度は目を通しているんでしょうか。 そうなんでしょうね、きっと。
『漫画研究会』
原稿をポスターに貼って展示する形式でもって、ストーリー漫画1作『おまんこ大好き!』、小説の挿絵1セット『O嬢の物語』、4コマ漫画1シリーズ『あずまんこ大王』の計3作がありました。
『おまんこ大好き!』は『世界のすべてがオマンコに見える少女が、綺麗なオマンコをみつけてクンニしたところ、そのオマンコは少女の母親だった』というシュールな内容です。 少女や背景はポップな筆致で描かれている一方、オマンコだけは異常に緻密な点描で描かれていました。 少女が認識する世界は『犬もオマンコ』『朝ごはんもオマンコ』『カバンもオマンコ』なため、ページによっては画面全部がオマンコだったりします。 タイトルの『オマンコ大好き!』の主語は、主人公の少女というよりも、これだけたくさんのオマンコを描いた作者なのかもしれませんね。
『O嬢の物語』では、シーンごとに挿絵が用意されています。 ロワッシィで鞭打たれるシーン、鞭と性交で同じ表情になることを確認されるシーン、ランプを抱えて天井から吊るされるシーン……う〜ん、上品で繊細な絵柄です。 さすが漫画研究会、絵の基本が出来てるからこそ、私達とは一味違った素敵な絵が描けるんでしょう。 シーン自体は学園で経験済みなものが殆どでしたから、新鮮味はありません。 ですがOの苦悶や羞恥する表情に迫力があって、とばすことなくすべての挿絵を鑑賞できました。
最後の4コマ漫画は、オマンコに関する蘊蓄が題材なようです。 『オマンコの襞の形は何歳で決まる』『オマンコを鍛えるにはお尻を締めろ』『スカルファックは誰でもできる』……といったネタを、4人の学園生が手を変え品を変え語り合うという形式です。 『背を伸ばすには牝ホルモンの分泌を抑えるといいと聞いてオナ禁するも、1日もたなずにイッてしまった性感少女』の4コマが個人的にツボでした。