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大沢商事の地下室
【SM 官能小説】

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知子のショー-7

「わかります、私の場合は母でしたけど」
「お母様が?……」
「ええ、とにかく女の子らしくしとやかにしていないとみっちり意見されました……」
 幸恵が自分の経験をとつとつと話す……知子は食い入るように聞き入っている。
「すごく静かな闘い方ですね……でも勇気も必要……」
「知子さんの場合には当てはめられないけど……」
「いえ……自分の中で闘うって、強くなければできないと思います、外に向かって喚くよりも……私が幸恵さんだったら思い切り派手な格好で盛り場をうろついてたかも……」
「私もあまり偉そうな事は言えないんですよ、里子さんに下着を着けていない事を見破られて、このショーに関わったり出演したりすることで発散してる部分が大きいですから」
「失礼ですけど、今も?」
「ええ、スースーしてますよ、でもSMを経験する前と後ではちょっと気分は違います、以前はいつも身構えてましたけど、今は密かな楽しみ、みたいな所もあるんです、もし街中でビル風かなんかでめくれちゃっても今ならペロって舌を出して『見えちゃいました?』くらい言えそう」
「そうか、今度幸恵と外出する時はビル風が吹きそうなところを選ぶかな」
「社長に見られたって舌も出しませんよ」
「ははは、強くなったもんだ」
「それが強さ……」
「強さといって良いのかわかりません、でも風に吹かれたら適当になびいたほうが倒れ難いとは思います、風に立ち向かうばかりだと倒れる時は根こそぎですから」
「……良くわかります……私なんか根っこも張ってないのに立ち向かってばかり……」
「あたしは学がないし、難しいこともわからないけど、男と女、とりわけ女のことについては少しはわかってるつもり……SMって男の欲望ってイメージだと思うけど、本当は違うのよ、女が身を投げ出してまで性の悦びを追求する態度に男はぐっと来るものなの、本当は女が主役、吊りや拘束もそう、一生懸命勉強したり仕事したりするには、好きなものを遠ざけたりして自分を律しないといけないでしょう? 吊られたり縛られたりして逃げられない状態でなら、限界まで感じることが出来る、男はそれの手助けをしてくれるのよ」
「ほう、男は手助けするだけか」
「社長、それでご不満?」
「いや、大いに満足しておるよ、限界まで感じて女が失神した時はゾクゾクするからな」
「その時、女をどう感じます?」
「美しいな、泡吹いて白目剥いておっても美しい、いとおしいもんじゃよ」
「ほらね……男って本来そういうもの、まあ、あなたの先輩みたいなのもいるにはいるけど」
「まあ、わしに言わせればそいつは修行が足りんな、女に心底入れあげたこともないんじゃろうな、女をわかっとらんし、男もわかっとらん」
「女はわかるけど、男もわかってないってどういうこと? 社長」
「ああ、女に限らず挫折したことがないんだろうな、おそらくは、今の自分が万能のように思ってるんだろう……そういう奴は挫折した時につぶれちまうことが多いな、男は挫折をたくさん経験して現実と折り合いを付ける事を学んで行くもんだよ、その時にちょっと上に折り合いをつけるか、下に折り合いをつけるかでだいぶ違うがな」
「含蓄あるわ、さすがに72年生きてないですね」
「ははは、わしも学はないからな、経験でしかものは言えん、理論はないんだよ」
「私……頭でっかちでしたね……人の思想を全部受け入れて別の人に押し付けようとするばかりで……自分の中で消化してないものだから反論されるのさえも拒んで……」
「理論がいけないなんて言わないわよ、だけど経験も大切、それがわかれば大丈夫ね」
「今日は特別な経験を……」
「とんでもない経験だけどね」
「いえ……少なくとも男性を見る目は変りそうで……」
「あなたをずっと抱いててくれる男性もいるんだからね」
 気がつくとずっと井上の腕の中で話していた。
「あ……私すっかり……居心地良くて」
「いや、いいんだ」
「彼、男らしいでしょう?」
「はい、今までの私は男らしいなんて言葉にはすぐ拒否反応してましたけど、今は素直に聞けます……とても男らしいです……」
 知子は井上の膝から降りると首に腕を廻して頬にキスをした。
「せめてものお礼です……」
「今の、すごく女らしかったよ」
「ね? 女って得でしょう? 1時間抱っこしてもらってたお礼がそれで済んじゃうんだから」


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